日記 Audio PCの導入と進捗その5 Roonの検証、RAATとDANTE

 Audio PCについて、ソフト面の検証に移っている事は書きましたが、最近Roonの試用をスタートしました。
 現在色々と検証中なのですが、まずはRoonのInternet Protocol(以下IP)を使ったオーディオ伝送であるRAATと、現在私が構築しているDANTEを比較しました。
 とは言っても、厳密な比較はできない訳ですが。
 理由としては、DANTEとRAATの両方に対応したトランスポートが無いからです。
 以前RoonとDANTEが共存可能っぽいという事を書いた気がするのですが、これは私の読み違いで、単にRoonからアウトプットにDANTEのサウンドカード(ASIO)を選べるというだけでした。
 私の使用しているFocusrite D16R MK2はRoon Readyではない為、Roonのoutputとして直接選択する事は出来ません。と言いますか、恐らくRoon ReadyなDANTE機は存在しないですが。
 あくまでRoonからはDANTE用のサウンドカードを指定し(私の場合はDANTE Virtual Soundcard)、そこから先はDANTEでの伝送となります。
 その為に、サブシステムの方に移していたLumin S1を再度メインシステムの方に持ってきてRAATを試しました。S1はRoon Ready機なので。
 上記の理由により、厳密に言えばRAAT + S1とDANTE + D16 MK2の比較となります。
 以下、比較を箇条書き。

・微細領域の情報量はDANTE環境の方が優れていて、差も小さくはない。
・音場の広さはDANTE環境の方が優れている。特に上下はRAAT環境の方がはっきり狭いと感じる。
・音場の立体感、特に奥行き方向の描写は明確にDANTE環境の方が優れている。
・音場の周辺情報の描写、空間そのものの描写は明確にDANTE環境の方が優れている。
・音の芯のクオリティは中域と高域に関しては概ね同等。
・低域の表現に関しては、RAAT環境は音場の上下方向の狭さも影響し、沈み込むべき音が沈み込まず、やや腰高な印象を受ける。
・音色の描写は、中域と高域は概ね同等。低域は音色の深みや自在性でDANTE環境の方が多少優れている。
・音の分離は基本的にはどちらも必要十分な物を持っているが、音数の多い音源ではDANTE環境が優れている。
・時間軸精度は、RAAT環境の方が揺らぎが多いように感じる(が微差)。

 という訳で、方々でRAATの評判を見ていてちょっと期待していたのですが、私の現環境ではほぼ全方位でDANTE環境に対して有利な点はありませんでした。
 とは言え、この結果を持ってDANTEがRAATに対して優位であると判断している訳ではありません。
 以下に二つ理由を述べます。

1.送り出し機そのものの性能の違い
 最初に述べた通り、RAATはLumin S1、DANTEはFocusrite D16R Mk2をトランスポートとして使用しています。
 S1は税込み価格で約200万円と非常に高価な機種ではありますが、あくまでネットワークプレイヤーであり、デジタル出力はその中の一機能でしかありません。発売年も結構前で2015年ですしね。
 一方でD16R Mk2は価格こそS1の1/4程度ですが、デジタル入出力(とDANTEを繋ぐ)専用機であり、発売も割と最近で2021年です。
 別環境でS1とD16R Mk2のデジタル出力を比較したこともありますが、そこでも厳密比較ではないとはいえ、明確にD16R Mk2の方がワンランクは基礎性能が上と感じました。
 今回の比較では単純に規格だけでは無く、そのトランスポートとしての差が影響した可能性が高いです。

2.ネットワーク関連機器の影響
 私はネットワーク関連機器は、基本的にそっち方面の信頼性で選ぶべきものと考えており(特にルーターは)、オーディオメーカーが出しているルーターやスイッチは導入していません。
 その為に、RAAT環境にとっては不利に働いた可能性があります。
 それはDANTE環境も同じじゃないかと思うかもしれませんが、そもそもDANTE自体がネットワーク関連機器を製造しているメーカー製のスイッチを推奨している規格です。
 そして何より大きいのが、DANTEはその性質上ルーターが要りません。構築できない事は無いのですが、DHCPを使い払い出されるアドレスの使用はむしろ非推奨です。
 確かにIPは使っているのですが、通常のインターネット回線とは隔離して構築する事が推奨されており、私もそのように構築しています。
 ですので、スイッチは同等としても、一般的なルーターが入っているRAAT環境はその分不利と考えられます。
 これにオーディオ系のスイッチやルーターを入れれば、その効果は推測できない物の、結果が違う物になる可能性は高いです。

 今回の比較はこのような感じです。
 今の所私の認識としては、ルーターやスイッチまで含めてオーディオ用途の機種でガチ詰めするなら分からないが、一般的なネットワーク機器で臨む場合はDANTE環境が有利なのでは、というものです。
 やはり、ルーターをネットワーク内から省くことが出来るというのは大きなメリットだと思います。
 私は先にも述べた通りオーディオ用のルーターやスイッチを入れることには消極的な為、仮にRoonを利用し続けるとしてもDANTE環境を選ぶかと思います。
 RAATを利用するとなると、ルーターやスイッチに加えて新たに高品質なデジタルトランスポートも探す必要が出てくる上、その結果どこまで行けるいかが読めないので、ちょっと割に合わなさそうだなあと。
 次回以降は、Roonそのものの音質や使い勝手について書いていきたいと思います。