日記 Audio PCの導入と進捗その9 Roonの検証、音質の確認

 Roonの検証において、音質についての評価は一番最後に回していました。
 その理由は、ある程度自分の主観が混じっているとはいえ、一番最初の印象があまりにも肯定的なものでは無かったからです。
 その為、比較試聴を続けていてはらちが明かないと判断し、4~5日間くらいRoonのみで音楽を聴き続けました。
 これでRoonの音に耳と脳を慣れさせて改めて比較試聴を行う事で、ある程度バランスを取る事が出来るのではと考えた訳です。
 出来るのならばもう少し長期間慣らした方が良かったのでしょうが、試用期間の関係もありこの日数となりました。
 比較対象は、私が現在メインで使用しているTuneBrowserです。また、試用しているRoonのバージョンは最新版です。

 まず最初に、ウェブ上で調べた情報を元に、Roonの各種設定を以下の通りにデフォルトから変更しています。
 記録していなかったのでもしかしたらデフォルト値そのままな項目もあるかもしれませんが、概ねこんな所だったはずです。

設定項目のオーディオタブ
・バックグラウンドオーディオ分析スピード → ライブラリの読み込み完了後オフに
・オンディマンドオーディオ解析スピード → ライブラリの読み込み完了後オフに

バイス設定
・クロックマスタープライオリティ → 1(最高)に変更
・最大バッファサイズを使う → オフに
・「2つのパワー」のバッファサイズを使う → オフに

DSP設定
・デフォルトで挿入されていたパラメトリックEQ、クロスフィード、ヘッドホンEQを削除

 

 再生環境は、Audio PC → Focusrite D16R MK2(DANTE接続) → Lavry DA-N5 → Jeff Rowland CORUS/PSU → MSB PremierHPA → Focal Utopiaです。
 因みに、上記設定項目やDSPのフィルタ等を弄っていないデフォルトの段階では、基礎性能的に見て割と厳しい感じでした。
 以下、箇条書きに。

・情報量についてはRoonの方が勝っていると思うが、明確には判断しかねる。理由は、増えた情報について脚色の疑いが消せない要素が多い為。
・Roonについて現状で明確に脚色と判断できる要素もある。一番わかりやすいのはボーカル。最初はRoonの方が情報量が多いかな?と思ったが、聴き進める内に全てのボーカルに同じテクスチャを付加していたため、脚色だと判断せざるを得ない。
・Roonは低域の沈み込みが足りず、全体的に腰高な印象を受ける事が多い。低域の量や質と言うよりは定位の問題が大きいか。RAATの検証をした時にも感じた要素(その時よりはマシ)だが、これはRAATだけではなくRoonの傾向でもある模様。
・音源の各パートの前後関係、空間の周辺情報についてはTuneBrowserの方が上手。Roonは奥行きが無いわけではないが、細かな前後関係が見えにくいのと、やや圧縮して聞こえる。
・ダイナミックレンジやその表現、弱い音から強い音への移行等の表現についてはRoonの方が上手だと感じるが、やり過ぎに感じることも少なくない。
・総じていえば、少なくとも私の環境のおいては基礎性能は概ね互角だが、それぞれに長所と短所があるという感じ。但しRoonの方にはどうにも脚色感を強く感じる面があり、あまり好きな傾向ではない。

 この結果については、あくまで私の環境(特にPC構成)では、という点についてご注意ください。
 現在RoonによるPC再生の音質改善の取り組み・方法論については、概ね以下の要素が重要視されていると思われます。

・CPUはファンレスCPUクーラーで駆動できる範囲で最良の物。性能の低い物はNG。
GPUは可能な限り高性能な物。これをライザーカードを使い電源と振動を分離し駆動する。2枚使い推奨。
・電源は可能な限り高性能な物を使用。理想はバッテリー直?
・ノイズ対策を徹底する。

 私のAudio PCはCPUこそ高性能な部類ですが、GPUはAPU内臓のRadeon 610Mという割と貧弱な物です。
 電源は一応オーディオ用として売られている物を使ってはいますが、こちらもやはりそこまで高性能という訳では無いです。
 その他対策についても、CPUクーラーのファンレス化こそ先日実現しましたが、それ以外の要素では足りない面が多いと言えるでしょう。
 CPUクーラーのファンレス化で、効果の出方がRoonの方が大きかったようにも感じますので、伸びしろと言う面では有利な可能性があります。

 ですがその伸びしろを考慮したとしても、現状で結構な脚色を感じ、個人的にはあざといと感じる一歩手前で許容範囲ギリギリ、好みからはかなり外れた傾向だと感じます。
 ここからPCを強化していったとして、それがより自然に脚色が少なくなる方向に変化していくのならば良いのですが、傾向はそのままに各性能が強化されていくとなると結構辛いです。
 既に記事にも上げたように使い勝手の面で特別な魅力を感じている訳でも無いので、そこも含めて総合的に判断した結果、今の所移行する予定はありません。
 今後PCを強化していった際に、どこかで改めて1か月だけ契約して確認してみるとかはあるかもしれませんが、完全移行する可能性はかなり低いと思われます。
 最後に、私が現在のRoonを利用したPCオーディオの方法論について、疑問に感じた事を書いておきます。

1.Roonの動作は特に重い訳では無い
 現在のGPUを利用した方法論や、関連の情報発信を読んでいてRoonはかなり動作が重いソフトウェアなのだと思っていたのですが、実際に使ってみると大して重くなくて意外でした。
 私のAudio PCのAPUはRyzen 9 7945HXというもので、CPUが16コア32スレッドで動作周波数もそれなりに高く高性能な方ですが、デスクトップ用のCPUまで含めれば最上位という訳ではありませんし、内臓GPURadeon 610Mとお世辞にも高いとは言い難い、むしろ貧弱とすら言って良い物です。
 ですがこれを使ってですら、Roon再生時のCPU使用率は7~9%程度、GPUの使用率は6~7%といった所でした。
 確かにRoonはOpenGLを使っている事を明言しているために、GPUがある程度影響を及ぼす可能性はあると思うのですが、GPUの性能をここまで使っていないとなると、RTX4090等を足しても効果が見込めるかはうーんという感じ。
 高性能な物を使って余裕があった方がという考え方もあるでしょうが、現状ですらマックスの1/10も使っていない位に余裕があるとなると、これ以上積んでも誤差の範囲になってしまいそうな気がします。
 実践している方々が、経験も環境の詰め方も遥か彼方にいる方たちなので、流石に効果が無いとは思わないのですが、どうにもそこの相関関係が見えないのと、実践されている方ですらそのロジックはよく分からないと言ってたりもするので、かなり謎な部分です。

2.GPUの電源と振動を分離するは理解するけれど
 GPUについてライザーカードを使ってマザーボードに直付けしない事で振動を分離し、更に電源も分離するといった対策は、確かにオーディオ的には納得が行くものです。
 ですが、実際に使っている写真や紹介している製品を見ると、接続がPCI Express 3.0 ×1接続にしか見えないのが、何とも片手落ち感を感じます。
 RTX4090においては、その性能を最大限に発揮するためにはPCI Express 4.0 ×8もしくはPCI Express 3.0 ×16が必要で、それ以下になると帯域幅が足りずに性能低下を起こすと言われています。
 それがPCI Express 3.0 ×1となると、大幅に帯域が足りません。流石に額面通り1/16にはならないでしょうが、恐らくその性能の半分も発揮できていないはずです。
 まあ先述の通りRoon自体が、少なくとも動作時のCPUやGPUの使用率を見ると大して高い性能を必要としている訳では無いので、別にそれでも充分に間に合うと言えばそうなのでしょうが、なら何で最高峰のGPUが必要なのかという話になる気がします。
 実際に試してそれが一番良かったという事なのでしょうが、少なくともPCの動作面から見ると謎が多すぎて、説明できない事が多い様に感じます。

 私が感じた疑問は主にこの二つです。
 実際に取り組んでいる人たちの情報発信を見る限り、その動作原理はともかく効果については確かにあるのだろうとは思います。
 オフでの面識がある訳では無いものの、ウェブ上でのやり取りや情報発信の内容からしても、信頼度が高い方たちですし。
 とは言え先にも述べた通り、その辺りを飲み込んだとしても個人的な好みどころか許容範囲から外れる可能性すらあると感じるので、やはりRoonを用いた方法論の方には進まないと思います。
 現在使用しているTuneBrowserがそこまで良い選択肢だと思っている訳でも無いので、違う方法論を今後も模索していきたいと思っています。