日記 オーディオ機器の高騰についての思考の補助線

 最近Xで気になるポストを見かけたので、そのことについてちょっと書いてみたいと思います。
 件のポストは概略すれば、オーディオは楽しいと書いた人に対してそれはあなたがお金を持っているからだと返されたという物。
 因みにその噛みついていた人は、このままでは一般の人がまともなオーディオ機器を買えなくなると憂いていると書いていました。

 何と言うか、多分実際にはオーディオの現状について大して知らないし、何ならそこまでオーディオやって無いだろうなとすら感じました。
 何故ならば、オーディオ機器の高騰が大きな問題となるのは元から殆どの人にとって関係の無い領域で、極めて少ない上澄みの部分だからです。
 私の感覚としては、概ね100万円を超えるような機器を視野に入れると顕在化してくるかな、と感じています。

 オーディオの入門とも言える10万円以内の機器に限って言えば、むしろ以前より質も量も良くなったんじゃないかとすら思います。
 例えばUSB DACやネットワーク関連機器は以前よりも遥かに豊富ですし、スピーカーもヘッドホン(イヤホン含む)もまあ特に不足しない位には選択肢があります。
 その中で、例えばCDが殆ど聞かれなくなったのでディスクプレイヤーが減ったとか、スピーカーで聴く人が減ったのでプリメインが減ったとかはありますが、それはそれで別の問題です。
 ミニコンポがほぼ絶滅したのも、別にオーディオ機器の価格高騰とはあまり関係ないですし。
 1980年代の状況と比較して入門~ミドルクラスの機器が減ったと主張する人もいますが、それもまたオーディオ機器の高騰とは別の要因。
 むしろ、廉価帯の機器で消えたジャンルの多くの理由は、スマートフォンやPC等の汎用機の性能が上がり、代替できるようになったからというのが大きいでしょう。
 つまるところ、確かに消えた機器はあるけれど代替となる機器もまた存在していますし、むしろトータルで見れば以前よりもお金をかけずに楽しめるようになったし、選択肢も増えたのではと思います。
 更に、以前よりもECでのプロオーディオ機器の取り扱いが増え入手が容易になってますし、情報も簡単に調べられるようになったので、パワードモニタースピーカーやオーディオインターフェースの選択も遥かに身近になっていて、そこも入れれば更に選択肢は増えます。

 

 問題になって来るのはそこを超えて所謂ハイエンドと言われる領域の入口に立とうとした時で、そこで商品を探すと以前よりも明らかに価格が上がっているのです。
 以前は100万円を超える機器というのは一つの指標になっていたように感じられ、その辺りに定評のある機種がいくつもありました。大体100~150万円、少なくとも200万円以内といった価格帯の機器でです。
 勿論それよりも更に高額な機器もありましたが、概ね段階的にステップアップしていけるようなラインナップが揃えられていました。
 ですが今は100~150万円で機器を探すとめぼしい機種は少なくなっており、特に海外製品の値上げ等もあり軽く200万円を超え、300万円に近い機種も多くなっています。
 例を一つ挙げると、以前100万円台の機種(大体150万円前後位)で極めて評価が高かったChord Daveは、今は250万円オーバーといった具合。
 大体50万円前後の機種を使っていて、次は大体100万円前後で……と探したら、明確なステップアップを実現するならいきなり250万程度の製品を検討しなければならない、という事が割と起こり得てしまうのが現状なのです。

 つまるところ、今問題となっているのはオーディオ機器の全体的な高騰では無くて、極端な二極化です。
 そこそこの領域で楽しむ分には良いのだけれど、本気で追及を始めようと思うといきなりハードルが上がり、少しずつステップアップする事が厳しくなってしまうという事です。
 更に上を目指そうとなるともう一般人とは縁のないレベルまで高騰しており、年収で数千万円有っても恐らく楽では無く、何なら億レベルで稼いで無いと無理じゃねってレベルになっています。
 以前は少なくとも一般人でも多少稼ぎの良い人ならば何とかと夢を見られた物が、今や明らかに裕福層に入っていないと手も足も出ないレベルになってしまっているのです。

 確かにそこを問題にするのならば分かるのですが、件のポストは「まともなオーディオ機器」という表現をしているのを見るにどう考えてもその領域じゃないので、いやお前実は知ったかぶりでしょと言いたくもなるのです。
 単に自分は良識ある人を装って他人を攻撃する手口にも見えますし、何ならこういった類はむしろ一番その界隈の人工を減らすので、本当に未来を考えるのならば慎むべきはどちらなのかよくよく考えてほしいものです。