日記 コスパ度外視?

 先日、X(旧twitter)のTLに、「趣味なんだからいちいちコスパなんて考えるな」みたいなポストが流れていました。
 まあ、マジレスするのもどうかと思ったので特にその場で反応はしなかったのですが、丁度いいのでこのテーマについて書いてみます。

 こういった類の話はヘッドホンブームの始まりの頃にも言われていたことが有りました。その際はもうちょっと強い言葉で、「コスパを考えるのは逃げ」とすら言われていたことが有ります。
 ですが、結局どこまで行ってもコスパの概念は捨てられる物では無く、それを実現できるのはごくごく限られた人間だけだという話。多分、割合で言ったらオーディオ趣味をやってる人の中でも1%もいないんじゃないですかね?

 実際に例を上げてみましょう。私がメインとするヘッドホンの環境で、コスパを考えずに環境を整えるとします。
 まず、送り出しは自作PCで最高環境を築くなら概ね100万程度、場合によってはそれオーバー。PCが駄目で専用のトランスポートを入れるならTaiko SGM EXTREMEで約650万円。
 DACはMSB Select DAC + Select Digital Directorで約1800万円+約550万円。
 プリアンプが必要なのですが、パッシブプリでいいならBespokeのプリで約350万円。アクティブプリを入れるならばメーカーにもよりますが、例えばBoulder 3010なら1400万円オーバー。
 ヘッドホンアンプはMSB Dynamic HPA入れるなら約300万円、オーテクの鳴神入れるならこちらは1000万円オーバー(但し鳴神ならばプリは省ける)。
 ヘッドホンは1つだけ例を上げると、Focal Utopia SGとリーケーブル費用でこちらは合わせて100万前後。
 他には電源関連とかインコネとかラックとか、必要な各種周辺機器・アクセサリ・ケーブル類を諸々合わせて、最高峰で組むと多分1000万円は下らないでしょう。

 とまあ、概算だけで軽く5000万オーバーしちゃう訳です。試行錯誤を踏まえれば更に行くでしょう。
 いや、それは極論を言い過ぎ、それぞれで満足できる価格帯があるはずだという主張があるかもしれません。
 ですが、その発想自体がコスパを求めるという事です。
 別にオーディオはお金をかければかけるだけ良いという趣味ではありません。各々が自分に合った環境で楽しめるならば、それで十分という趣味です。
 だからこそ自分の出来る範囲で最も好みの機器を探す、あるいは性能の高い機器を探すという事は極めて自然な事であり、それがコスパを考えるという事です。

 象徴するポストが以前のXであったのですが、「LinnのKlimax DSM/3をDACとして選ぶなら、プリが要らない(一緒になっている)のでコスパは良い。なお、500万円のコスパとは(白目)」というものです。
 つまりは、一般的な感覚で言えば雲の上の様な環境、ハイエンドと言って差支えない領域においてですら、コスパの概念は付きまとうという事です。と言いますか、それを考えないと本当に青天井で価格が上がっていくのでやってられません。

 これがまあ、ポータブル環境ならばあるいはそこそこ現実的かもしれません。
 調べてみたところ、大体DAPの最高峰でも100万円以内、イヤホンの最高峰で100万円前後、ケーブルの最高峰で100万円前後と概ね300万円程度では収まりそうなので。
 とは言え、これだって殆どの人にとってはふざけんなって額でしょうし、そうでなくともこれだけの環境を持ち歩こうという人は極めて少ない筈です。

 確かにコスパばかりを気にして、思い切った行動が取れないのはそれはそれで問題でしょう。けれど、じゃあコスパなんて考えないで行動できるか、というとそれもまた違う話なんです。
 それは1か0では無くグラデーションであり、濃いか薄いかの違いというのが正確な所だと思います。
 少なくとも、自分に許された範囲で最大限に楽しむ為には、結局は大事な概念なんだとよ思っていた方が賢明です。