ネガティブフィードバック(NFB)と科学的な態度について考える(前編)

 オーディオにおいてとかく話題になりがちなNFBについて、それから派生して科学的な態度とは何かということを、今回は考えてみたいと思います。
 まず、私はNFBを極端に嫌い、無帰還である事に拘泥する商品は基本的に購入対象になりません。
 一方で、NFBを駆使してただひたすら特性を追い求めている製品も、ほぼ購入対象になりません。
 まずはこのあたりについて書いてみたいと思います。

 

1.NFBは新しい技術ではありません
 NFBは意識的に使われるようになったとされているのが1927年だそうですから、90年以上の歴史があります。つまり、ある程度枯れた技術と考えることができ、そのノウハウも相応に蓄積されているといってよいでしょう。
 もちろん何事にも副作用はあるでしょうから、NFBにだって問題があるとは思いますが、かといってNFBそのものを否定するのは流石にどうなのと思うところです。
 結局はメリットとデメリットを考え、どこでバランスさせるのか、というのが重要なことだと考えています。

 

2.NFBはどれだけかけても問題ないか?
 NFBをかけると特性を改善できることは確かですが、一方で無制限にかけても良いのか?という問題があります。
 これは回路の安定性から来る限界(発振しない限界)が存在しますが、私はそれよりも手前でも、音質上明らかにデメリットの方が勝る限界があると考えています。
 現在主に中華メーカーの低価格帯・高特性の商品群は、恐らく前者のみを考えている様に思われます。
 そして、その商品の代表的な一つとも言えるTopping A90を実際に購入し音質を確かめたことにより、高特性を追い求める為なら大量にNFBをかけても良いのか?ということに概ね自分なりの答えを得ることが出来ました。
 当時は測定方法を思いっきり間違ったりしてかなり恥ずかしい部分もあるのですが、それでも実際に聴いた機器の実力については、かなり残念な音だったといわざるを得ませんでした。
 海外において、高価格帯の商品を打ち負かしているというレビューを見ると、本当に聴き比べてレビューをしたのか?と思ってしまいます。
 先にも述べた通り、NFBは最近出てきた技術というわけではありません。
 どのオーディオメーカーだって、特性を改善できる技術である以上、研究していない(そしてそのノウハウが積みあがっていない)はずがないのです。
 また、余程傑出した人物が登場した時は周囲と大きな実力差がある場合もありますが、通常プロと呼ばれる領域で圧倒的な差があるということはまずありません。たとえあったとしても、その状況を周囲が許し続けるほど甘くはありません。
 現在注目されている低価格・高特性の商品群は、その技術力で老舗オーディオメーカーより遥かに安価で、高性能・高音質な商品を生み出していると考えるのは、あまりに夢を見すぎでしょう。
 私としては、NFBを大量にかける事による特性の改善は、多くのオーディオメーカーが「やれなかったこと」ではなく、「やってみたけど結果が芳しくなかったのでやらなかった」事だと考えています。

 

3.特定の領域では問題になりやすいのかも?
 オーディオ機器を探している時に気付いたのですが、プリアンプにおいてだけ顕著に無帰還を謳う製品、若しくは帰還量を可能な限り抑えた製品が多いと感じます。
 名機と呼ばれた機種や定評を得ているメーカーに限ると、更に割合が上がるように思います。
 プレイヤーやDAC、プリメインアンプやパワーアンプ等においては、メーカーによる思想の違い程度なのですが。
 オーディオにおける機器の中で、プリアンプに相当する範囲(ヘッドホンアンプも多分ここ)においては、NFBのデメリットが表面化しやすいのかもしれません。
 もっともこれは私が観察した範囲の中での話なので、あくまで印象論でしかありませんが。