Jeff Rowland CORUS / PSU ファーストインプレッション

 

 CORUS / PSUは中古購入ですから、特にエージングの必要は無かろうという事でファーストインプレッションです。
 なお、通電時間がしばらく開いた影響か最初の頃は本領を発揮してはいなかったのですが、少し使い続けるだけですぐに良くなりました。
 本インプレッションは、あくまで以前まで使っていたChord ElectronicsのIndigoの比較という形になります。
 また、他の同格あるいは前後のプリアンプの試聴経験もほぼ無いために、それらと比較してどうかという判断も出来ません。
 ですので、一般的なCORUSの印象とは違った内容になるかもしれませんが、その辺りを補正していただけると幸いです。

 まず、帯域バランスについては、Indigoと比べれば恐らくCORUSの方がよりニュートラル寄りなのだろうと思いますが、若干中域が強くなり低域が控えめになりました。
 とは言え、両者ともフラットと呼べる範囲で敢えて言えばという程度ですし、設置について詰めて行けば変わりそうなレベルの変化ではあります。
 音場の広さについてはほぼ変化なし。これは、両者に差が無いというよりは、既にヘッドホン側の限界付近に近づいているのではと思います。
 定位は明らかにCORUS/PSUの方が優れていて、元々悪く感じていたわけでは無いのですが、よりゆるぎない安定感を感じます。
 音色については一番大きな変化を感じるところで、CORUS/PSUの方が数段上手。特にアコースティックな楽器で差が大きく、ピアノの表現で最も差が出ると感じます。
 単純に細かい情報を拾えているという事もあるでしょうか、そもそも描く色数が増えたように感じる程で、とても色彩豊かに感じます。
 情報量についても明確に差があると感じますが、良く言われることのある「聴こえない音が聴こえるようなる」という様な変化では無いです。
 まあ、厳密に言えばそういう変化だと言えなくも無いですが、それは例えば音が消える間際の滑らかさや細かさが上がったり、音色や音の表現の細かな変化がより分かるようになるといった変化です。
 要は、様々な過渡領域の変化度合いがより細かく見えるようになったという感じです。「こんな音が入っていたのか」という様な変化は、個人的にはこの領域ではもうほぼ起こらないと考えています。
 音の分解能については、ぱっと聴いた印象ではそこまで変化を感じない物の、よくよく聴いてみると地力の違いが見えるという感じでしょうか。
 音をはっきりと分離させるのではなく、むしろそれぞれの音が相互に影響するようにまとまりがあるけれど、聞き分けようと意識するとちゃんと分離している事が分かります。
 音と音の間の空間の情報もよりしっかりと描写出来ており、また各種情報量が増える中、音の輪郭を強調するようなことも無くそれでもちゃんと分離できているのは、やはり地力がある機種なのだろうと思います。
 また、これまでプリに対しては殆ど意識していなかったのですが、駆動力という概念はプリにもあるのだなと思わされました。
 特に、強音の表現や、弱音から強音へ一気に変化する際などで、明らかにCORUS / PSUの方が表現力が高いですし、押し引きのグリップがより効いているように感じます。

 現在感じているのはこんな所でしょうか。
 全ての印象を総括して、一言で表すならば「豊かな音」ですかね。一般的なCORUSの音の評価とは大分違って見えるかもしれませんが。
 なお、IndigoとCORUS / PSUではそもそも定価ベースで約3倍の価格差がある上に、Indigoは複合機、CORUS / PSUは純粋なプリなのですから、まあ差が開くのは当然でしょう。
 但し、全ての項目でほぼ改善したと言っても差支えは無いのですが、気になる点が無いわけではありません。
 それは、明らかに音全体に重さが付加されたように感じるという事。
 以前、DACからヘッドホンアンプへ直つなぎと間にプリアンプを挟むことの違いとして、プリそのものの個性とは別に音に重さが付加されるように感じるとポストしたことがあります。それが、今回のプリの変更でより強くなったように感じたという事です。
 もっとも、それが瑕疵になっているかと言うとそういう訳でも無く、ちゃんと音はコントロールできていると感じますし、むしろ自在性は増しているでしょう。
 少なくともその重さが原因で動き出しが鈍かったり、制動できないと感じることもありません。ただ、それでも重いと言う感覚は常に消えずに有ります。
 因みにこの感覚は、より大音量にすると気にならない方向に動くのですが、いかんせんそうすると私自身の耳が死ぬので……
 ちょっと違う分野の話になりますが、割と近い感覚として車があります。
 ある程度良い車になると、パワーのあるエンジンを積んでいるし、ブレーキの制動力も上がってるし、車体の剛性も増しコントロールも意図した操作をより正確に追従するようになります。
 けれど、良い悪いは別として絶対的な軽さだけは軽自動車に敵わないよね、という感覚です。
 違和感とも呼べないような違和感ですが、この部分だけは自然界の音からは離れていく方向の様にも思います。
 今後足回り対策やケーブル類などで詰めの作業を行っていきますが、何となくこの点については、そこまで解消されないんじゃないかなと予想しています。
 これについて個人的にはパッシブプリが一つの答えに成り得るのではないか、と考えていますがこればっかりは自分のシステムに組み込んでみないと分かりません。

 ひとまずはこんな所ですが、また色々と詰めていく過程で起こる変化等に関しては随時書いていきたいと思います。