日記 ハイレゾ対応の意味

 先日ツイッターで、ハイレゾ対応のイヤホンがダイソーにあったという旨のツイートがあったので、ちょっとこの点について書いてみたいなと。
 以前も似たような記事を書いた気がしないでもないですが。
 イヤホンやヘッドホン等の発音帯を有する機器のハイレゾ対応は、40KHz以上が再生可能な事となっています。
 よって、これ以上の帯域を再生できればハイレゾ対応とはなる訳ですが、だからと言って高音質とは限りませんよという話です。
 至極当たり前のことですが。

 そもそもイヤホンやヘッドホンで可聴帯域外の再生能力は枝葉末節に近い物があり、まず重要なのは人の可聴帯域である20Hz~20KHzの再生能力です。
 しかもその可聴帯域も、全てが聞こえている人はほぼいないといって良い理論値なので、実際に重要な帯域は更に狭いです。
 そして、その可聴帯域がしっかりしていれば良い音を出せるという好例が、Etymotic ReserchのER4SRです。
 この機種の初代は高級イヤホンのパイオニアと言っても良い機種であり、それからモデルチェンジを経ながらずっと第一線におり、未だコアなファンがいる位評価が高い機種です。
 もちろん人によって好き嫌いはあるでしょうが、この機種を音が悪いという人は、その価格を加味すればかなり少ないでしょう。
 では、ER4SRの再生周波数特性果たしていくらでしょうか?実は20~16KHzであり、これは初代から変わっていないはずです。
 つまり、高域側はハイレゾどころか、人の可聴帯域の理論値である20KHzにすら届いていないのです。
 それでもずっと評価は高いままですし、逆に過去にソニーが最高120KHzまで再生できると謳ったヘッドホンがありましたが、そちらは評価が芳しくなかったりしました。
 勿論これらの例だけをもって無意味だとまで言う気はありませんが、再生周波数特性だけで判断することは、オーディオにおいては慎むべき行為だといって良いでしょう。
 また、高域再生能力だけに限っても、ER4SRを聴いて高域が出ていない、伸びないと感じる人はまずいないレベルでしっかりと出ています。
 高域側のワイドレンジ感や抜けの良さなどは、再生周波数特性が高ければ高いほど得られるという物でも無いという事です。

 こういった事が起こる理由の一つとして、ヘッドホンやイヤホンのドライバの特性上、一つのドライバが広帯域を担う事は負担が大きいという事が挙げられます。
 勿論、ある程度のコストをかけられる高価格帯の機種においては、ドライバにも相応のコストをかけられるために、音質を保ちながら帯域を広げることも可能でしょう。
 ですが、大してコストをかけられない低価格帯においてそれは難しく、無理に広い周波数帯を再生できるようにすると、大抵の場合はその弊害が大きく発生します。
 なお、イヤホンではドライバを複数積む機種も多いのですが、その理由はこの無理を解消する為というのが大きく、複数のドライバを搭載し低い周波数と高い周波数で担当を分けることで、それぞれのドライバの再生周波数を無理のない範囲に収めているのです。
 勿論多ドラにすることはデメリットも大きいのですが(でなければヘッドホンも多ドラだらけになってるはず)、それでも一つのドライバに無理をさせない事が、イヤホンにおいてはシングルドライバのメリットと天秤にかけられる程度には大きいという事でしょう。
 それ位に一つのドライバで広い周波数を担当するという事は大変な事だという事であり、その為にはしっかりとした開発が必要で、相応にコストもかかるという事です。
 個人的な意見としては、低価格帯~低中価格帯においては、ハイレゾ対応の機種はむしろ音の悪さの証明にすらなるのではないかと思う程です。

 これが再生機器、例えばDAPやネットワークプレイヤー等だと、そもそも再生できるかどうかに関わってくるので、ハイレゾ対応は重要です。
 アンプ関連の特性についても、そもそも再生周波数特性を広く取りやすく、ハイレゾ対応位なら大してコストが増えるという事も無いでしょう。
 ですがヘッドホンやイヤホンについては、特にそれがシングルドライバであれば、ハイレゾ対応はかなり負担が大きいです。
 なので、特に低価格帯(少なくとも1万円以内)においては、ハイレゾ対応は疑ってかかる位で丁度良いと思っています。