電源について調べた事まとめ

現在私が使用しているメインの電源はスター電器のTranster-Fという機種ですが、今後近いうちにグレードアップしたいという事でいろいろ情報収集をしていました。今回はその情報のまとめ記事です。自分の中で情報整理する意味も兼ねています。 オーディオにおいて高いクオリティの電源と成り得るものは、大別すれば恐らく2つの方式に分かれます。 1つはフィルタ回路によりノイズを取り除き電源の純度を高める方式、もう一つは電源そのものを再生成(あるいは補正)する方式です。 また、電源を再生成する方式は更に二つに分かれます。一つはACスタビライザ、もう一つは周波数コンバータです。 ACスタビライザとは単に出力電圧あるいは波形を一定に保つもの、周波数コンバータはこれに加えて出力周波数を一定に保つまたは可変するものです。オーディオ界隈では前者をリジェネレータ、後者をクリーン電源と呼んでいる模様。 ACスタビライザにも更に方式がいくつかありますが、オーディオ用として有用そうなのはリニアアンプ方式のみでしょうか。 周波数コンバータにおいては、リニアアンプ方式とpwmインバータの二つです。前述のフィルタ形式と合わせてそれぞれの特徴を列挙してみたいと思います。

 

1.フィルタ方式 Isotekのパッシブ方式の物やTransparent、中村製作所の電源等がこちらの種類のようです。会社が既に倒産しているので詳細は分かりませんが、信濃電気の電源も多分こちら。単純に絶縁トランスを噛ませただけのものも恐らく概念的にはこちらに入ると思います。 設計次第なところもあるものの、電流供給能力にほぼ影響を与えない(コンセント直と同じ)事を売りにしている事が多いです。 但し設計が悪ければノイズだけでなく電源の一部もフィルタしてしまうのか、力感が失われると評されることも多い。 また、原理的にノイズには対処できますが、電源そのものの歪みには対処できません。

 

2.リニアアンプ方式(ACスタビライザ) 私が調べた限りではAccuphaseのみが該当するものと思われます。思われると書いたのはAccuphaseが自ら謳っている訳ではなく、技術概要を読んで判断したためです。Accuphaseの説明を読む限り、周波数コンバータの働きは持っていないようなのでACスタビライザと判断しました。 リニアアンプ方式のACスタビライザは一般的には最も安定度、歪率等の波形品質に優れている方式と言われていますが、コストや効率の面で劣るとされています。 電源そのものの歪みにも対応できますが、効率で劣ることと関連して電流供給能力に制限が出ることが多いようです。 Accuphaseの最新のクリーン電源は出力電圧が100V±1Vと誤差1%ですので、産業用交流安定化電源と比較すればそこまで精度は高い訳ではありません。

 

3.リニアアンプ方式(周波数コンバータ) 産業用の交流安定化電源では多機能かつ最も信頼性のあるハイエンドの位置に属していますが、現在オーディオ用電源でこの方式を採用している物は見当たりませんでした。 CSEはリニアアンプ方式の周波数コンバータを作っていたっぽいのですが、こちらも既に倒産したようで情報が取れないために詳細は不明。もっとも出力電圧精度は誤差1%程度だったようなので、Accuphaseと同じくそこまで精度が高いわけでは無かった模様。 リニアアンプ方式の技術概要としては交流電源を整流回路によって直流に変換しリニアアンプの電源へ、一方で水晶発振子等から正弦波基準電圧を作りリニアアンプの入力に持ってきて増幅・出力するという中々胸アツな方式です。 設計によっては出力トランスレスにしたり広帯域のフィードバックをかけたりして特性を改善できるなど、産業用なのにやっていることが凄くピュアオーディオっぽい。分野は違えど頂点を目指すなら似たような方向性に落ち着くという事でしょうか。 産業用の交流安定化電源で周波数コンバータのリニアアンプ方式となると、各メーカーの主力機は多くが歪率0.5%以下、出力電圧誤差0.2%以下等という素晴らしい特性を誇ります。 特に出力電圧精度については、オーディオ用電源では特性自体を公開していないメーカーが多く、公開しているAccuphaseCSEの精度も誤差1%である事を考えればその差が際立ちます。

 

3.PWMインバータ方式 入力電源を整流回路によりいったん直流に変換した後、pwmスイッチング方式のDC/ACインバータを用いてAC電源を再生成する方式です。 PS AUDIO、光城精工等のクリーン電源がこちらに該当します。 一般的には出力品質はリニアアンプ方式に劣りノイズも大きいとされていますが、効率が非常に優れています。また、半導体技術の進化により高周波化が可能になったために、出力電圧品質の高品質化は比較的容易との事。PS AUDIOのDSD技術を用いたというものは、この高周波化を指しているものと思われます。 一般論として質はリニアアンプ方式に劣るといっても、最終的な品質は設計次第で互角になるようです。 やっている事はある程度違いは有れどAC/DCスイッチング電源の逆なので、オーディオ界隈では毛嫌いされそうなものですが、クリーン電源となると特にそういったことは無い模様。

4.その他 IsotekのGenesisシリーズはDCに変換しないで正弦波を再生成しているみたいなので、上記概念には全く当てはまらない技術のようです。但しお値段がとんでもない上に、使用できる機種が上流に限られるなど制約も多いです。 また調べる限りIsotek以外で似たような方式を採用しているものも無さそうなので、信頼性や技術の特性についてもIsotekの言い分を信じるしかないというのも少し心配な点でしょうか。 金額的にどうあがいても縁が無いので突っ込んでは調べていませんが、今後もしかしたら注目される方式かもしれません。 似たようなことを産業用の交流安定化電源でやってくれるところが出ると、信頼性もぐっと上がるのでそちらも期待したいところ。

 

こんな所でしょうか。 正直言って、調べれば調べる程ノウハウは産業用の交流安定化電源の方が多く蓄積されている印象。 特にオーディオ用途の電源は、出力電圧の精度をきちんと明記して欲しいと思いました。 現状で魅力的に映るのは産業用の交流安定化電源の方ですね。 今後も情報収集を続けつつ、次に導入する電源を選定したいところです。