先日Cayin C9についてのレビューをアップし、HPPAモードの音質が非常に優れている事に言及しました。
私自身HPPAモードについて興味を持って購入した物の、予想を大きく上回る音質でかなり驚いた訳です。
そこで、改めて私のポータブル環境全般と据置を色々と組み合わせて、トータルの性能だけでなく可能な限り切り分けを行って、どの部分がどう影響しているか?という点を調べてみました。
各機能によって切り分けると、概ね以下の通りになると思います。
・デジタルデータの送り出し
・DAC部分
・プリアンプ部分
・パワーアンプ部分
検証に用いたのはCayin N8 BBとC9で、機能的に全ての部分を切り分けて検証する事は不可能ですが、それでもかなりの部分を試せます。
組み合わせたのは以下の通り。
1.N8 BB Coax Out > Lavry DA-N5 > JEFF ROWLAND CORUS/PSU > MSB PremierHPA > Focal Utopia
2.N8 BB Line Out > CORUS/PSU > PremierHPA > Utopia
3.N8 BB Phone Out > PremierHPA > Utopia
4.N8 BB Phone Out > Cayin C9 HPPAモード > Utopia
5,N8 BB Phone Out > Utopia
他先日のC9のレビューの為に行った組み合わせ各種。
1はデジタル送り出しの確認、2はDAC性能の確認、3と4はN8 BBのPOをプリ替わりにした場合の性能確認、そして5は1~4までと比較することでN8 BBのパワーアンプ部の性能を間接的に確認しようという事です。
これらに加えC9と据置との組み合わせを考える事で、どの部分がボトルネックになっているかある程度分かるのではないかと。
結果を以下に纏めます。
1の構成
これは私のメイン環境とほぼ同じで、デジタル送り出しがN8 BBになっただけの物。
メイン環境のPC自体はそこまで詰めておらず、再生ソフトもTuneBrowserという事もあるかもしれませんが、明確に差はあるものの思ったよりも大きな差は無かったです。
勿論全体的にやや力不足感は有りますが、ポータブル機の機能の一つと考えればかなり頑張っているのではという感じ。
2の構成
この構成にするとやはり基礎性能は一気に落ちます。
情報量(特に微細領域)の減退が大きく、据置の環境と比べれば音色の表現や音場の周辺情報などはかなり減少します。
ですが、何とか音の芯は比較的少ないクオリティ低下で済んでいる印象。
3の構成
はっきりと耳につくノイズが常にあって、音質評価を出来るレベルにありませんでした。
ヘッドホンアンプの出力はプリ代わりに使えると言われてたりしますが、完全な代替にはならない事を実感しました。
4と5の構成及びC9と据置環境との組み合わせ
3の構成が無理だったので急遽HPPAの代役をC9に任せ、N8 BBのプリアンプ部とパワーアンプ部の性能を見ることに。
2までの構成と比べて明らかに性能低下が目立ち、音の芯のクオリティや音場情報の根幹にも影響してきます。
4と5の性能差は逆にそこまで大きくありません。勿論C9を入れた方が音に余裕や力強さがあります。
ですが、駆動力に関する部分はともかく、音質に関してはN8 BBのパワーアンプ部もかなり頑張っているのではと言う印象。
C9については、パワーアンプ部分が優れていてプリアンプ部分がボトルネックになっているのはレビューで書いた通りです。
以上の結果から、少なくとも今回試した限りでは、一番ボトルネックになっているのはプリアンプ部分、少し差が開いてDAC部分だろうと感じました。
一方でデジタル送り出しとパワーアンプ部は結構頑張っていると感じましたし、C9を組み込めば少なくともパワーアンプ部は据置と比較しても遜色のない性能を得ることが出来ますので、この二つについては現在の状況でもそこまで手を入れる必要は感じません。
一方でDAC部分やプリアンプ部分は力不足感がありますし、一連の検証を経て一度失われた情報は後段で何とか出来るものでは無いという事を痛感する結果でもあったので、ここをしっかり詰めないと総合的な性能を上げて行くのは厳しいだろうと感じました。
DACに関しては打てる手は(その結果は不明ながらも)多いです。Shanling H7とかOnix Mystic XP1の様にポータブルDACアンプという製品もありますし、現状は厳しかったとしても今後の進化に期待することができる状況です。
そうなるとプリアンプ部分が一番の肝になりそうですが、実際の所プリアンプ部を改善する方法は極めて少ないと言っていい状況です。
仕様を確認する限り、ポータブルDACについて殆どの機種は純粋なプリアウトが無さそうなのでそちらの進化に頼る事も難しいですし、ポータブルプリアンプとか何のためにあるのってレベルのコンセプトだと思うので、今後出てくる可能性は極めて低いというかほぼゼロでしょう。
アナログポタアンのプリアンプ部が改善されることが一番期待できそうな展開ですが、Cayin C9という市場で最上位クラスの製品ですらかなり厳しいので、恐らくすぐには無理でしょう。
そういう訳で、今の所真っ当な手段では如何ともし難いのですが、逆に言えばあまり真っ当な手段でなければいくつか思い浮かぶという事でもあります。
その中でも多少現実的な線の案があるので、近い内に試してみようかと画策中です。自作も必要になりそうなので、ちょっと時間はかかるかもしれませんが。