ヘッドホン祭秋 2023 その2

4.完実電気その1
 LTA Z10e+CRBNの試聴。これも悪くはないのだが、先述した断絶の手前側の音である。
 MSB Pemier HPA+Utopia等とはそもそもダイナミック型と静電型で全く違うじゃないかと言われそうだが、そういった違いを超えた基礎性能の差がどうしようもない。
 低音は頑張っているが、あくまで静電型としてはというエクスキューズがつく。質的にはかなり柔らかめで、無差別級のダイナミック型のヘッドホンと比べれば明らかに分が悪い。
 かといって、静電型が得意とする中高域やアコースティック系の楽器に物凄く強いという訳でもなく良い勝負という感じだったので、ちょっと優位性を見いだせない。
 特にZ10eの価格は100万円を超えると思われ、必然的に比較がハイエンドクラスになることから、静電型を駆動できるというメリットを考慮してもかなり苦しい戦いになるだろうと感じる。

5.完実電気その2
 Warwick Audio Model Oneの試聴。今回のヘッドホン祭で聴いた中で、最も救いがないと感じた機種である。これは、この機種の低域が私が最も苦手なタイプであるというのも影響はしているが。
 そもそも基礎性能があまり高くないし、低域がぼわつき気味で明らかに質が悪く、かといって他の部分で長所が見えるわけでもなく、正直言って褒められるところが無い。
 妙に音像が太く大きく感じ、その割に距離が近いわけでもなく細部が見えやすいわけでもないので、余計に大味に感じた。
 現行の最新機種であるBravura(日本には正式には入ってきていない)に興味があったのだが、Aperioを買わない限り合わせるアンプがModel Oneのものだと思うと、一気に興味を無くしてしまった。
 これはLTA Z10e+CRBNと同時の試聴で、そちらに感覚が引きずられたのもあるかもしれないが……
 因みに同じブースにCorinaがあったらしいが見事に見逃してしまった。トラブル多発+時間が無いのコンボで大分視野が狭くなっていたらしい。

 

6.YAMAHA
 YH-5000SE+HA-L7AとHA-L7A単体の試聴。整理券制だったが、絶妙にフィットする時間が空いていたので聴くことにした。 
 これらの評価は方々で見ていたので、かなり恐る恐る聴いた。その先入観があったためか、思っていたよりもまともな音は鳴っていると感じた。
 だがしかし、思っていたよりまともであっただけで、良い音であったわけではない。というか、これで合わせて100万円ですと言われたら、私ならば怒る。
 まず、YH-5000SE+HA-L7Aの音は、全体的にかなりドライ。あと、音の密度が薄いというか軽い感じがする。
 確かに色付けは無いのかもしれないが、忠実系かと言われればあきらかに作為を感じる音で、これを無色透明とは言いたくない。
 基礎性能も決して高くはなく、全体的に粗や明らかな短所が見えるのに、これといった長所が無い。特に情報量に関しては、多くないどころか音を引いているのではと感じるレベル。
 このクラスのヘッドホンの性能ってこんなもんだっけ?と思ってヘッドホンをUtopiaに変えたら全くそんなことはなかった。
 明らかに情報量に差があるし、音色の描写やリアリティ等基礎性能の差は歴然であり、個人的にはそもそも同じクラスにいるとは思えないレベルである。
 なお、ブースで用意していた音源が、YH-5000SEの質感と合う傾向か柔らかめの音の音源しかなく、かなり気を使って用意したのではないと思うがそれは流石に邪推だろうか?
 多分、しっかりした録音のピアノソロとか、J-POPでもKens Bar辺りを鳴らすと、かなり厳しめの音が鳴る予感がする。他にはクラシックのオーケストラとかも結構厳しそう。
 個人的にこのタイプの音は妙にエレキギターの歪み感とマッチすると感じるので、それがメインの音源と合わせるなら悪くないが(それで用意されていた結束バンドの音源との相性はまだマシだった、但しボーカルは期待してはいけない)、流石に用途が限定され過ぎだろう。
 HPA自体の出来はヘッドホンと比べればまだマシではあるが、かといってお勧めできるかと言われれば否。なお、試聴の時間が限られていたため、全てPure Directで聴いている。
 こちらもヘッドホンほどではないが音はドライな方向、YAMAHAはこの音が好きなのだろうか?
 全体的に悪いとまでは言わないがかといって目立った長所もなく、これに50万のプライスタグを付けるのはかなり無謀ではなかろうか。
 後、以前の記事で懸念した通り駆動力は大してない。そんなに音量が取りにくいわけでもないTHRORで、Volume最大でややうるさいレベルだった。
 音量が取れるかどうかとは別で駆動できているかどうか、という点でもかなり微妙。少なくともTHROR+自作ケーブルをきちんと駆動できるレベルではない。
 写真を見たときにも書いたが、実物を見てもデザインに必然性を感じず、質感も悪くはないが印象を覆すほどではない。
 実物を見てもやはり感想としては、エレガントではなく無骨系かつ奇を衒ったっデザインという印象である。ある程度コンパクトに感じられる点はまだ救いか。
 ボリュームの操作感は、よくある電子ダイヤルという感じで質感を含めても大して高級感は無いし、操作に対するレイテンシも多少ありむしろウィークポイント。
 これ、市場にある様々な機種をちゃんと研究して作ったのだろうか?

 

7.Violectric 
 V590 V2の試聴、使用したヘッドホンはFocal Utopia。
 全体的なバランスが良く、うまくまとまっている機種だと感じた。
 基本的には忠実系の音だが、若干音を聴きやすくするような脚色を感じる。あえて言えばちょっとだけ美音系にふり、滑らかさを追加する感じ。
 これは音源次第ではなくどの曲でも感じたので、多分機種側で付加している情報だと思われる。

 以前の価格であれば割と文句なくお勧めできたのだが、現状の価格(96万円超)では流石に基礎性能が足りないと言わざるを得ない。

 

8.Layfic Tone
 THE Industrial-ist WIRED Professional Monitorの試聴。再生環境はSonyDAPだったので(機種は確認するのを忘れた)、ちゃんとした実力を把握できていない可能性がある。
 ソースに忠実系の音でかつ、あまりカリカリした音では無く自然な感じ。TAGOのヘッドホンとかと同系統と感じた。
 発売価格はまだ未定との事だったが、15万円かそれより多少安い位、十万円台前半は無さそうな感じだった。
 それを考慮すると、ヘッドホンそのものの質感は価格比で若干物足りないか。ヘッドバンドの調整がGRADOと同じタイプで、私自身が好みでない事も影響しているかもしれない。
 音質的には高品質なモニターの道具として使うならうってつけかもしれない。しかし、リスニング用途としてはちょっと目立たない存在になりそう。
 バランスが良く、癖が無く、価格に見合った基礎性能もあるとは思うが、コストパフォーマンスに優れているとまでは感じなかったので、物足りなさにもつながってしまいそうな塩梅に感じる。

 今回聴いたのはざっとこんな感じです。
 もっと聴きたい機種はありましたが、ブースの込み具合といられる時間を勘案しなるべく待たずに聴けるところを聴いた結果、このようなラインナップになりました。
 感想の大まかなまとめとしては、「うちの環境も中々頑張ってるじゃん」でした。少なくともここから、ハイエンドクラスの機種で何か加えるのは利得が小さそうなので、今世代は見送りが決定。
 次世代の機種に期待ですね。