ヘッドホン祭秋 2023 その1

 以前にも書いた通り、ヘッドホン祭2023秋に行ってきました。その中で聴いたものについて簡単に感想を書いていきたいと思います。
 ただ、状況的にどのブースもあまり占有して聴いていられる状況ではなくかなり短時間の試聴だったこと。持ち込もうと思っていた再生環境がトラブルにより全く使えなくなったため、どうしても詳細までは確認できませんでしたので、その点はご了承ください。
 なお、鳴神については事前予約制だという事を把握しておらず、そもそもノーチャンスでした。

 因みに、起こったトラブルとはまずAurender Flowの充電不良。
 東京へ出発する前にはきちんと充電できていたのに、前日に故障が発生し全く充電できなくなりした(むしろ残っていた分も全部放電された)。これによりAurender Flowが使えない事が朝の時点で確定。
 次にDAPのEchobox Explorerが、当日会場でフリーズを頻発し殆ど使用できず。これは故障というよりは、本体のスペック不足から来るものらしいのですが、前日まで普通に使えていたために油断していました。
 その為に持ち込んだ音源で試聴できず、完全にブースの用意した音源に頼らざるを得なくなったのでした。

 これらの事情により、イヤホン類の試聴は全て断念。取り敢えず持ち込んだFocal UtopiaとKennerton THROR(いずれも自作ケーブル)を使って、据置機を中心に回る事にしました。


1.逢瀬
 逢瀬の試作DACとMarlin DAC、アッテネータ+ヘッドホンパワーアンプという構成。
 試聴は持ち込んだFocal Utopiaのみ。その為駆動力に関しては確認できず、あくまで音質傾向のみの確認。
 ソースに忠実系かつ高い基礎性能を地で行く音。くっきりはっきり系の音で、価格帯を考えれば基礎性能の高さはかなりのレベルだと感じる。
 性能の高さ、焦点の合い方等から鋭さを感じるかもしれないが、あくまでソースの情報を正確に拾いピントが合っているだけなので、実際に鋭い音という訳ではないと思う。
 ソースの粗をごまかすようなことはしなさそうな音だったので、痛い音が出るかどうかは音源次第だろう。
 正直言って、このクラスのDACでここまでの性能を出せる機種は殆どないと思われる。
 試作DACとMarlin DACの違いは、視聴時間や環境的に聞き比べるのはかなりシビアに感じた。
 若干試作DACの方が良い意味で繊細さがあり、すっきりとしていて見通しがよくしなやかさがある、と感じたがあまり自信はない。
 トータルでの感想はさすがにそれなりの上流にMSB Premier HPAを合わせたときの凄みには及んでいないが、それはいくらなんでも比較対象がおかしいか。
 試作DACとヘッドホンパワーアンプが合わせて100万円を多少超える程度だと思われ、それだと今のところ対抗できそうな構成は思いつかない。
 ブースが混んでいたしスタッフも別のお客さんに対応中だったこと、私自身もあまり時間が無かったことからきちんと話したり自己紹介出来なかった事などは残念。


2.DVAS
 model2というヘッドホンパワーアンプ+自社製作アッテネータという構成。個人的に今回のヘッドホン祭で最も良いと感じた機種。試聴に用いたのは自前のFocal Utopia。
 以前にMSB Premier HPAはそれ以前のHPA群との断絶が大きく、これまで機種の延長線上にいる音ではないと書いた事がある。
 そして、DVASのHPAはその断絶を超えてMSB側にいると思う。特に音のリアリティが秀逸。基礎性能の他総合的に見てもこの日聴いた中では頭一つ抜けている。
 試聴かつ並べて比較できたわけでもないので、Premier HPAと比較してどうこうは流石に無理。
 これも約100万円と非常に高価な機種だが、価格改定後のPremier HPAやLina等と比べればまだ手が届きやすい価格なので、特にPremier HPAを視野に入れながら価格改定前に購入できなかった人は、一度試聴してみることをお勧めする。


3.OJI SPECIAL
 BDI-DC44D+OJI SPECIAL製アッテネータの試聴。
 今回会場で初めてその出展を知り、非常に高い期待度をもって試聴した。ヘッドホンは持ち込んだFocal Utopiaのみ。
 だが、残念ながらあまり結果は良くないものだった。悪い音ではないし、むしろ普通に良い音だとは思うのだが、それが問題だと思う。
 正直言って、先に書いた大きな断絶の手前側の音、言い換えれば旧世代のHPA群の延長線上の音でしかない(し改善幅も小さい)と感じた。
 これがマス工房model406とかムンドのTHA2辺りが頂にいたころに出ていれば賞賛できたのだが、MSBのHPA二機種が既にある状況でこの出来と価格(126万5千円)は流石に……である
 ブースの人に感想を求められ答えに窮し、結局お茶を濁す形で去ったのだが、それで察してくれという感じだった。
 出店に際する環境構築云々を色々と説明していたが、それ以前に現環境でこのプライスを付けるならば色々と不足している事を認識してほしい。
 当日の上流に原因があるのではと思う方もいるかもしれないが、ブースの方自らがこの再生機器で問題ないと言い切っていたので、この音を私はOJI SPECIAL側が想定した音質だと認定した。
 なお、アッテネータの中身は抵抗系とのことだったので、トランス式だったらもしかしたらまた違った感想になるかもしれない(があまりそんな気はしない)。

 

 長くなりましたのでその2に続きます。