音楽鑑賞において、大別すればヘッドホン(イヤホン含む)かスピーカーかという事になると思います。
そして、ヘッドホンが持つ明確な強みとして、かなり手軽に使用する機種を(アンプも含めて)使い分けられるという事があります。
ですが、もう一歩踏み込んでではどのようにして使い分けするか、という点について今回は書いてみたいと思います。
とは言え、この点についてはかなり個人差が出ると思っていて、今回書くのはあくまで私がこういう風にしていると言うに過ぎません。
それでも、ある程度は共通する部分もあるかと思いますので、参考にしていただけると幸いです。
1.ヘッドホンとヘッドホンアンプの数
これについては、私はヘッドホンアンプの数は出来るだけ絞り、ヘッドホンの数を増やす方が概ね労力が少ないと思っています。
静電型とダイナミック型及び平面磁界駆動型ではアンプの作りが全く違うので、静電型を常用する場合最低2台構成になるのは仕方がありません。
静電型もダイナミック型等も一緒に駆動できるのは、現行だとLTA Z10eやイシノラボのMASTERS SX-3300STAX/HP位、メーカーが閉業した会社を入れてそこにAudioValveのSolaris、Luminare(日本に入って来てないけど)等が入る位でかなり希少です。
選択の幅が著しく狭くなる、と言いますか実質無いに等しいので、基本的に静電型のアンプは専用を用意することが無難でしょう。
ですが、ヘッドホンアンプの数が増えすぎると、それはそれで組み合わせの数がとんでもない数になって行きます。ヘッドホンもヘッドホンアンプの数も同時に増やしていくとなると、その増え方が指数関数的になってしまうからです。
例えばアンプ5台、ヘッドホン5台で実に25通り、そこから一台ずつ増やだけで36通りにまで跳ね上がります。
ですので、どちらかはなるべく増やさず最小限に、もう片方で使い分けを考えた方が良いでしょう。
それでじゃあどっちが使い分けに向くか、と言えば変化の差分が大きいのは圧倒的にヘッドホンなので、やはりアンプは最小構成でヘッドホンの数を増やすのが現実的でしょう。
2.ヘッドホンの数をどこまで所有、常用するか
私はヘッドホンを所有する数はともかく、常用できる数はそんなに多くできないタイプです。
機種によっても異なりますが、音を掴んだり使いこなしを考えたりするのに数か月、下手をすれば年単位で時間がかかるからです。
勿論メーカー出荷時状態しか考えないとすればその限りでは無いんですが、それはそれで勿体ないと思ってしまうのですよね。
色々と試行錯誤した結果、私が常用できるヘッドホンの数は3~5台程度(現在は4台)という所に落ち着いています。
一日で音楽鑑賞に使える時間は限られますので、その中でヘッドホンへの理解度を一定以上に保とうとすると、それ以上は厳しいのです。
また、ヘッドホンを使わない時間が長期間にわたると、久しぶりに引っ張り出した時にすぐに本領発揮とはいかない場合もあります。
どうしても実際に振動する部分がある以上、定期的に動かしてあげないとやはりコンディションを保つのは難しいのでしょう。それを考えても、私としては上記の台数が精一杯です。
後は、私自身どうにも面倒くさがりで、収納ケース等にしまうと途端に引っ張り出そうとする機会が激減するという理由もありますが。そんな訳で常用するヘッドホンは、リスニングポジションからすぐ手を伸ばせる位置に置いてあります。
この辺りが特に苦にならない人なら、もう少し常用できる台数を増やすのは可能だと思います。
所有に関しては、まあ場所が許せばいくらでもとは思いますが。
3.常用するヘッドホンの選定の仕方
これについても試行錯誤した結果、そんなに多くの台数を常用できない事もあり、最終的に基礎性能は遜色ない機種でなるべく揃えた方が良いと今は考えています。
どの機種にもそれなりに万能性が無いと、カバーできる範囲が狭まってしまうからです。
とは言え、これは持っている機種にも大きく左右されますし、価値観によるところも大きいでしょう。
私の場合は、Utopia何でもこなせる問題が有って、それ1本で大抵の音源で90点位出せちゃうというのがあります。勿論全てではありませんが。
どんなにこの音源には別のヘッドホンが向いている筈だというのがあっても、基礎性能とバランスの暴力で何とかしちゃう事が多いんですよね。
という訳で、現在常用しているのはUtopia初代、THROR、HE1000se、VOCEの4台です。
それぞれ大雑把に傾向を言うと、順に万能(基礎性能重視)、音像重視、音場重視、静電型ですね。とは言え、VOCEを除けばどれも一定以上のバランスの良さはあります。
これはヘッドホンの性能が上がるにつれ顕著になって行くのですが、長所と短所の差が激しいという事は少なくなり、万能+長所という機種が多くなります。
その為、長所特化型の機種ですら、上位機種の万能性に抑え込まれるという事態がかなり増えます。
特にUtopiaはその辺りが顕著で、基礎性能で大きく差を付けられずかつ上回る長所がある機種じゃないと、使い分け対象に入って来にくくなるのです。
まあそうは言っても、これは常用するヘッドホンの数、音源を聴くスタイル等とも密接に絡み合う部分であり、やはり個人差が大きいでしょう。
常用できる数を増やせるなら特化型を沢山と言う手段が取れるので、その場合は基礎性能に多少の差があっても問題なく運用できると思います。
後は価格帯によっては万能機種が一歩間違うと器用貧乏になったりもするので、そういう場合は特化型がより輝くでしょう。
他には、私は使う機種が一定で変化が無い期間が長期間に渡ってもそんなに苦にならないのですが、一定程度のスパンで変化がないと駄目という人もいるでしょう。
そういう場合も、変化を求めるという意味では万能タイプよりも特化タイプを狙う事が良い場合が多いように思います。
4.終わりに
色々と書いてきましたが、何度も繰り返し書いている通り、この内容はあくまで私にフィットするというだけです。
これが正解等とは口が裂けても言えませんし、各々の特性によって、あるいは何を音楽鑑賞に求めるかによって選択はいくらでも分岐します。
ですが、この辺りの情報って意外と発信している人は少ないような気がしたので、今回は思い切って書いてみました。