様々な考え方があるけれど 後編

前回の記事の続きです。

 

3.癖や弱点と個性の考え方
 癖や弱点、欠点等について、人によってとらえ方は違うと思います。ですが、基本的に競技スポーツにおいて、それらは個性とはみなされません。
 個性はあくまで長所において許される物であり、短所の免罪符として使われるものでは無いからです(先天的な障害等どうしようも無い物を除く)。
 また、その個性に対しての捉え方も、一般的な感覚よりかなりシビアです。
 そもそも、スポーツに限らず多くの競技においては、それこそプロを目指すあるいは国内の頂点を狙うようなレベルに至るまでは、実力を伸ばすうえで個性を重視することはあまり無いです(教育として捉える場合は別)。
 余程のレベルに到達しない限り、その競技における型や定石を叩き込まれることが殆どで、いかにそれを多く知っているか、実行できるかが勝負の大部分を左右します。
 そうやって定石を多く身に付け、様々な型を沁み込ませて、それでもなお現れる他者と差をつける違いがようやく個性として認められるのです。
 何故そうするかと言えば、迂闊に半端なレベルで個性を認めてしまうと、途中で行き止まりになっている道を進んでしまう事があるからです。
 ある一定のレベルまでは問題ない、むしろ初心者~中級者帯までは勝率が良いけれど、どれだけそのやり方を突き詰めても上級者以上には決して勝てない、そんなスタイルになってしまう事が往々にしてあります。
 そして、一度これは自分の個性だと言ってそのようなスタイルを身に付けると、修正に物凄く時間と労力がかかるうえ、修正に動いた場合一時的な実力の後退を受け入れなければならなくなってしまいます。
 ただ、ここに固執してしまった場合においては修正できる人はまだマシで、多くの場合そこで成長を諦めてしまいます。
 また、単なる短所を個性だと考えてしまうと、その点を指摘され修正をアドバイスされた際に、まるで自分という個人を否定されたように感じてしまうという弊害もあります。
 スポーツにおいて他者のアドバイスを受け入れられない人は、この状態に陥っている人が多いです。そして、オーディオ界隈でもそういった面は散見されるように思います。
 なお、私は自分のシステムは、まだまだ個性が許されるレベルでは無いと認識しています。あらゆる部分を隙なく突き詰めたシステムならいざ知らず、私自身の実力も含めて、多くの定石を知り使える型を増やす段階でしかないと考えているという事です。
 この姿勢は、別にガチ勢だけが取り組みの姿勢として身に付けるべきでは無く、エンジョイ勢も基本的には踏襲するべき、むしろエンジョイ勢こそが重視すべきだとすら考えています。
 定石や型というものはいわば先人の経験に基づく知見の集合であり、余程の高みを目指さない限りそれらに従うだけで事足りるからです。
 勿論、定石や型に従うと言っても自分で一切を考えなくても良いという事では無く、むしろその意味をしっかりと理解しなければならないですし、簡単に身につくという物でもありません。
 型や定石が支配的と言っても、100%全てそれだけで決まるという事もまた無いので、部分的には自分なりの試行錯誤が必要になる事もあります。
 ですがそれでも、定石や型ではこれ以上は厳しいという領域になって初めて、そこに挑戦する人間の想像力や発想力が試されることになり、個性が重要なってくると思うのです。

 

4.基礎や基本の考え方
 基礎や基本という物について、競技スポーツにおいて最初に取り組む簡単な技術と考えてしまう人が結構多く、初心者が取り組むものという認識のままな事が多々あります。
 勿論それも一面において間違いではないのですが、それだけの認識だと色々と誤ります。
 何故ならば、スポーツに限らず多くの物事において実力が高度になればなるほど、試されるのは基礎や基本と呼ばれる技術のレベルの高さである事が殆どだからです。
 確かに一番最初に身に付けるべきは基礎・基本ですが、それと同時に終わりのない追及を要される物であり、最後にたどり着く場所でもあるのです。
 例えば凄く難しい技術を身に付けた人と言うのは、競技スポーツにおいても存在しますし、そのことが他者とレベル差を生む要因になっている事も事実です。
 ですが、そういった選手が思わぬところで敗けたりすることも割とあり、「上手い人と強い人は別」等と言われたりもします。
 一方で基礎技術のレベルに違いがある場合、言い換えると当たり前だと考えるレベルに違いがあると、本当に残酷なまでに差が付きます。
 また、そこで違いが有る選手間での対戦では、余程のアクシデントが無い限りジャイアントキリングは生まれません。
 それは、その分野における王道と呼ばれる手法を重視し、真っ向から取り組むという事でもあります。
 私がオーディオにおいて観察する限り、一般的な評価が高い情報発信者、あるいは製造メーカーや技術者といった方は、この部分を大事にしている人が多い様に見受けられます。
 勿論そこに全くの遊びが無いわけでは無いですし、時には変調を楽しむこともあるでしょう。
 けれど決してそれを中心軸に据える事はなく、大事とされている要素に真っ向から取り組み、基礎を磨き続けている様に感じるのです。

 

 今のところ特に重視している要素はこんな感じです。
 中でも基礎への取り組みについては、今後もブレることなく取り組んでいきたいと考えています。