東京遠征記④ TIAS編 其の1~TAD、アーク・ジョイア、タイムロード

 本日から、今回の旅の一番の目的だった東京インターナショナルオーディオショウ(以下TIAS)で試聴した内容をアップしていきます。
 かなり多くのブースで試聴したために、記事数は相当に多くなると思われますが、概ね1記事当り3~4ブースを目安に更新していきます。

 記事を作成するにあたり、最初に一つだけ念頭に置いていただきたいことを記載します。
 殆どの記事において、「スピーカーの音」もしくは「録音の音」という表現が出てくるかと思います。
 これについては私の感覚に基づくもので、その音を聴いた瞬間にスピーカーから出ていると分かる音、録音だと分かる音の事を指します。言い換えれば、現実の音、生演奏の音と錯覚するような音では無い、という事を意味します。
 この感覚はかなり強固なのですが、今の所どのようなパラメータと結びついているか、私自身完全には分かっていません。
 基本的にはオーディオとして基礎性能の高い音かどうかだとは思うのですが、かなり基礎性能が高いと評されている機種でも普通に録音の音として認識されることが少なくありません。
 私のこれまで生きてきた中での音楽体験全体と結びついている可能性も非常に高く、一般的な指標とは言い難い面もあります。
 ですが、私にとってオーディオについての評価をする上で、最も大切な項目の一つとなっているので、敢えて使用しています。
 それが他者にとっても同様に感じるかどうかも不明なので、あくまで私の感覚に基づいた主観による評価である、という事をご理解ください。
 また、記事は試聴順に記載していきます。その為、同じブースでも離れて記載されている事もありますがご了承ください。

1.TADブース其の1
スピーカー:TAD-CE1TX
再生システム:D1000TX、C1000、M1000(EVOLUTIONシリーズ、ファイル再生)

 音そのものクオリティは悪くないですが、音が重いというか全く飛んでくる感覚がありません。言い換えれば、スピーカーに張り付いた様な音に感じます。
 音の分離は悪くありませんが、音の定位が破綻気味で、かつ安定していません。
 これは後にREFERENCEシリーズを聴きに来た時に判明したのですが、リスニングポイントに非常にシビアな様です。
 REFERENCEシリーズの試聴でも定位についてはほぼ同様だったのですが、前後はともかく左右については中央から椅子一つ横にずれるだけで定位が破綻する様です。
 ちゃんと中央にいれば定位は安定しましたので、恐らくEVOLUTIONシリーズでも同様と思われます。
 これがスピーカーの特徴なのか、セッティングが合っていない(もしくは極めてシビア)なのかは判断不能でした。
 音のリアリティについてはあまり感じられず、明らかにスピーカーの音と分かるタイプでした。
 ボーカルについてはそこまで質感は悪くありませんが、細部まで見える感じはありません。
 ブックシェルフという事で仕方のない面もありますが、低域を司る打楽器の質感はかなり厳しかったです。

 TADの試聴はTIAS2024で一番最初の試聴だったのですが、いきなり不安を覚える滑り出しとなったというのがこの時の正直な感想です。
 確かにTIASの中では決して高額な部類では無いとは言え、それでも定価ベースでトータル500万円を遥かに超えるシステムです。
 しかも、TAD自体が定評のあるメーカーで、好みかどうかという面は別として、基本的に実力は適価以上の評価をされていることが殆どです。
 ですが、私としては「この位の価格ならこの位のクオリティであって欲しい」という感覚とはかなり乖離しており、そんな筈は……という感覚を拭いきれませんでした。
 そして、この不安はある意味的中し、多くのブースで同様の感覚を覚えることになります。

2.アーク・ジョイア
スピーカー:Estelon AURA
再生システム:
【CD再生】 CD ー Burmester 061、プリ ー Bespoke audio Passive-Pre、パワー - Soulution 711
【アナログ再生】 - Dr.Feickert Analogue "Firebird" + acoustical systemus "AQUILAR"、プリ(フォノ) - Soulution 757、パワー - Soulution 711

CD再生時
 低域がややぼやけ気味に感じました。打楽器についても、質感の再現はかなり厳しいです。弦の質感もやや神経質であまり良くありません。
 全体的に見て、やはりすぐにスピーカーの音と分かる質感です。
 大きなダイナミクスへの追従性は良好で、音もしっかり飛んでくる感じはありました。
 微細領域についてはやや荒く、あまり細部まで見える感じはありませんでした。

アナログ再生時
 実在感はやや増した感はありますが、リアリティについてはやはり厳しいままで、スピーカーの音という感じでした。

3.タイムロード 
スピーカー:Chario Cielo
再生システム:プリ - Ultima Pre3、パワー - Ultima 6等、他の詳細は不明

 音飛びがかなり良いスピーカーだという印象です。
 ギターのインストやオペラが中心にかかっていたので、全体的な質感は分かりませんがそれらは中々良いと感じました。
 ですが、ギターで言えば主音やスラム奏法の音は悪くありませんが、ハンマリングやプリング、タッピングについての微細な質感が見えるところまでは行きませんし、トータルで見てもあまり微細領域が見える感じはありませんでした。
 ボーカルの質感はかなり良かったと思います。
 低域のコントロールはやや甘い感じがするのと、やはり低域を司る打楽器の質感は厳しいです。
 また、ボーカルやギター等の質感は良いと言っても、それでもスピーカーの音という感じで、それは当然音楽全体を通してもそう感じました。