東京遠征記⑦ TIAS編 其の4~Phasemation、Linn、Esoteric、太陽インタ―ナショナル

TIAS編 其の1~TAD、アーク・ジョイア、タイムロードはこちら
TIAS編 其の2~Accuphase、Luxman、ゼファン(BAYZ)はこちら
TIAS編 其の3~ステラ(Wilson Audio)、ゼファン(Marten)、ノア(Sonus Faber Suprema)はこちら

引き続きTIAS編です。

10.Phasemation
スピーカー:Sonus faber AIDA II
プレイヤー:アナログプレイヤー - Esoteric Grandioso T1、カートリッジ - PP2000 or PP5000、フォノ - 自社製品だとは思いますが詳細は確認してません、プリアンプ - CM-2200、パワー - MA-5000

 このメーカーのパッシブプリのCM-2200を私の現システムの最後のピースの最有力としており、個人的に非常に重要だった試聴です。
 私が入室した時はカートリッジの聴き比べをしており、まずはPP-2000(ボロンカンチレバー)時の印象から。
 まず全体的に質感は結構良く、特に金管楽器やシンバル等の音色が良かったです。弦楽器もそれら程ではありませんが、やはり質感は高いと感じます。
 低域が若干緩く実体感も良いという感じではありませんでしたが、そこまで悪くありません。
 ボーカルの質感は低域と比べればかなり頑張ってましたが、中高域~高域の良さと比べればやや物足りない感がありました。
 背景の静けさ、素通し感はかなり良く、音もしっかりと飛んできます。
 全体を通しての質感は、スピーカーが消える程では無いけれど、その中ではかなり上位という感じでしょうか。
 CM-2200については、単体での評価を行えるほどの切り分けは出来なかったのですが、それでも全体の特徴から見る限り、このまま最有力候補として問題無さそうだと感じました。

PP-5000(ダイヤモンドカンチレバー)に変更後
 情報量が明らかに増え、リアリティや質感も良くなったと感じました。音の鮮度も上がり、ダイナミクスや速度に関する自在性も向上しています。
 それでもまだスピーカーの音という感じを打破するまでは行きませんが、もう少し何かが嵌れば消えてくれそうな気配は感じました。

【中の人との質疑応答】
 聴き比べが終わって中の人がちょっとフリーになっていたので、気になっていたことを質問したら快く答えていただきました。ありがとうございます。
 質問は、最近発表されたCM-1500とCM-2200の差異についてです。もしそこまで差が無く、CM-1500で良いならかなり手が届きやすいですしね。
 CM-1500は私の理解では、CM-2200からトランス巻線量や切替接点を減らすことで物量(コスト)を抑え、その代わりにゲイン切替で対応することで、なるべく価格を抑えながら機能や音質的なクオリティは可能な限り維持しようとした商品という捉え方でした。
 中の人曰く、その理解で概ね良いけれど、実際の出音に関してはやはり歴然とした差がありますよ、との事でした。うん、許されなかった笑
 やっぱり当初の目標通りCM-2200を目指しますかね。

11.Linn
スピーカー:Linn 360 PWAB
再生システム:Linn LP12 50周年モデル(アナログ)、KLIMAX DSM/3(ファイル再生時のプレイヤー、DAC、プリ)、KLIMAX SOLO 800(パワー)

 部屋に入って音を聴いてただただ困惑。確かに音は出てますが、本当にそれだけとしか感じられませんでした。
 静けさはありますが、こちらに訴えかける物とかメーカーの思想どころか、音質の特徴自体がほぼ伝わってきません。非常に薄味です。
 とてもBGM的な鳴りと言えばいいでしょうか。
 私が入った時点で試聴客はかなり少なく閑散としており、また入った人もかなりのスピードで退室してましたので、恐らく多くの人にとって琴線に触れる音では無かったのではないでしょうか。
 後に調べて、約3000万円のシステムだったと知り衝撃を受けました。
 スピーカーはセッティングを間違うとどんなに良い機材を使っていても良い音は出ないと聞いてはいましたが、まさかここまでとは思いませんでした。
 その為、各種機器やスピーカーについては、評価できるものでは無かったという感想です。

12.Esoteric
スピーカー:TANNOY SGM 10
再生システム:ESOTERIC  K1X SE(SACDプレイヤー)、T1(アナログプレイヤー)、C1X solo(プリ)、M1X(パワー)、G-01XD(クロック)

※ここも写真は撮り忘れました。

 悪くは無いのですが、流石にスピーカー側の限界を色々と感じる音でした。
 これでシステム全体を評価するのは厳しいと感じたのと、残り時間と聴きたいブースの残数から早目に退室しました。
 凄く当たり前のことかもしれませんが、やはり局所だけ豪華にしてもボトルネックがあればその分の音しか出ない、総合力が大事だという事を改めて感じさせられました。


13.太陽インターナショナル
スピーカー:AVALON Precision Monitor 4
再生システム:デジタルトランスポート - TAIKO AUDIO OLYMPUS + I/O XDMI、DAC周り - DCS VIVALDIシリーズ、NGRA HD AMP(パワー)、プリは不明ですが多分NAGRA HD PRE?

 途中入室だったのでシステムの詳細は聴いていないのですが、恐らく上記のシステムだったと思われます。
 まず聴いて驚いたのが、スピーカーよりも後方に音場の中心があって、そこから広がるような定位になっていたことです。スピーカーではこういった定位のさせ方もあるのかと。
 ですが、個人的にはそこからこちらまで若干音が届き切らない感があり、ややもどかしさを感じました。
 音の印象としては非常に精緻な描写で、微細領域の情報もかなり見えます。音源に入っている音はとにかくごまかさずに、全てさらけ出すように感じました。
 しかしながら、確かに音像の定位の面から明らかにスピーカーは消えているのですが、上記のような特徴があっても、どうしてもリアリティの面でスピーカーの音という印象は最後まで拭えませんでした。
 情報量等ではゼファンで聴いた両システムの音よりもむしろ多いかもしれないと感じる面もあり、微細領域もより見える感もあるのですが、どうしてそう感じたかは今の所私自身謎です。

【編集後記】
 この日聴いた太陽インターナショナルのシステム、そして恐らくTIAS編最後の記事になるであろうエレクトリのMAGICO M7のシステムの音は、今回のTIASで聴いた中で最後まで(そして今も)解決しない謎でした。
 聴いた感じ情報量も、精緻な描写も、余裕も、微細領域の見え方なども文句なく良い筈なのに、何故かスピーカーの音という印象が拭えなかったからです。
 恐らくこれについては、私の中に欠けている認知があり、その方面で傑出しているシステムだったのではないか、というのが一応現状で推測している事です。
 多くの人が両システム共に極めて高い評価をしており、私の印象と齟齬があると感じるのですが、流石にそこで自身の感覚の方を信じられるほど自分の能力が高いとは思っていません。
 これについて、今後経験を積めば認識できるようになるのかどうかは、今の所何とも言えません。ですが恐らく、余程のきっかけが無い限り難しそうな気もしています。
 私のスタイルとしてもオーディオに前振りしているという訳でも無いので、その部分は気にしつつも、まずは自分の感性で良いと思うメーカーを追うのが先かなと考えています。
 この辺りについては、全ての記事を書き終えた後の総括でも触れてみたいと思います。