日記 アナログはやっぱり縁が無いかも

 オーディオをやってて、アナログをどうするかというのがずっと引っかかっていた事の一つにあります。
 いつも書いている事ですが私はかなりの面倒くさがりなので、レコードどころかCDですら面倒で全く再生しません。リッピングしてPCで聴く便利さを覚えたら、正直使う気にならないのです(リッピングは面倒くさいけど)。
 そんな私が、レコードなんてどれだけ音質に優位性が有ってもいずれ使わなくなることが目に見えてます。
 しかし、多くの人が音質の優位性を語るので、全く使わずにすっぱり切り捨てるのも何となく違う気がしまして。
 とは言え、アナログの再生環境を整えるには中々骨が折れます。ターンテーブル、トーンアーム、カートリッジ、フォノイコ等など。
 使わなくなることがほぼ既定路線の物に、そこまで労力と金銭を払うのも厳しい。
 なので、まあ取り敢えず情報収集だけはしておいて、後は様子見しようとなった訳です。

 

 が、情報収集していくと、何とも微妙な気持ちになること多数。
 まず、レコードの音質の優位性について、アナログだからCDの様に周波数上限でデジタル的にカットされず、20kHz以上も収録されている。だから音が良いんだと言うのが結構一般的で、かなり色んな人から発信されています。
 ですが、調べてみるとほぼ嘘と言っても差支えないお話の様でして。

 

アナログマスターに使うマスターテープが、20kHz以上収録出来るようになったの自体が割と後期の方。
・しかも、機械の調整箇所が相当に多く、バチバチに調整された状態でようやくスペック通りの記録が出来るが、調整が甘くなったり失敗したりすればすぐに上限は10kHz程度まで落ちる。
・たとえマスターテープが上手く行ったとしても、レコードのカッティングの限界で、超絶技巧を持った職人が頑張っても17kHz程度が上限。一般には精々15kHzが上限で、実際基本的にレコードの制作ではそれ以上はほぼすっぱりカットされていた。
・もし仮にレコード再生で15kHz以上の音が再生されていたとしたら、それは倍音などでは無く再生時に発生したノイズ。
・当時のマイクは大体20kHzが上限。有名なノイマンのU87でも20kHz辺りでは急激に録音レベルが落ち、基準よりも10dB程度下がる。他にも、基本的に当時のマイクで使われていた主要どころは、ほぼ全ての機種がスペック上20kHzが上限。
・何なら仮に上記の話が全てどうにかなったとしても、レコードのカートリッジ(針)の読み取りで10kHz以上の周波数帯では数%から下手をすると10%レベルで歪む。
・2016年現在のインタビュー記事で、レコードのカッティングを請け負う技術者の方が、レコードに収録される周波数帯域は50Hz~15kHz程度と普通に明言している。

 

 とまあ、調べれば調べる程不完全性が露になります。
 私が調べる限り、音楽の入れ物としての優位性は、録音・再生を含めてデジタル音源以上の物があるとはとても思えない。
 様々に調べるうちに、どうやらレコードがデジタル音源以上の可能性を持つ項目は、ほぼ一つに絞られるのではないか、と思うようになりました。
 それは、

 

・録音時、編集時、再生時の全ての過程においてAD変換とDA変換が一切行われない。

 

という事です。
 なお、レコードの再生時に発生するノイズが良い方向に作用するという面もあるかもしれませんが、それはアンコントローラブルな物なので性能とは別物だと判断しました。

 

 しかし、この仮説を立てると、レコードで聴きたいと思う音源がほぼなくなってしまいます。何故なら、過去のアナログ時代に発行されたレコードしか音源として有効でないからです。
 まあ、クラシックやジャズの音源なら多少は(手に入るかどうかは別として)あるでしょうが、メインで聴く音源はほぼゼロと言っていいレベルになってしまいます。
 現代でも一応レコードの製造は行われていますし、何ならブームになっている面もありますが、その音源はほぼ全てデジタル録音と言って良いでしょう。
 つまりは、CDやダウンロード販売、サブスクへの提供のための音源をレコードにプレスした物が殆どのはずで、AD変換もDA変換も普通に行われる以上それだと意味が無いのでは?という事です。


 ここまでたどり着いた時点で、ほぼアナログ環境を揃える意義は失いました。これを検証する為だけに揃えるのは、余りにも酔狂すぎるでしょうと。
 そんな事から、後はこの点について誰か検証してくれないかなと他力本願へシフトしました。

 

 そして最近、Monster Audioの記事でグルマンさんが検証されていました。
 曰く、「これが酷い。アナログに求める実在感などはなく、ただデジタル再生の劣化版である。」との事。個人的には、ああやっぱりそうなのかという感想でした。
 この検証の記事は1枚のレコードだけで、それだけで全てを決めるのは早合点なのかもしれません。
 ですが、グルマンさんの日頃の姿勢から察するに、そのバックグランドに膨大な積み重ねがあって、その上での最後の確認だったように思うのですよね。
 まあ、一人の検証だけを見て結論を出すことは流石にありませんが、こういった検証に関してかなり信頼の置ける方なので、個人的にはほぼ自分でトライする意義は失いました。
 という訳で、やはり私にとってアナログは縁の無い物となりそうです。