chaconneは水月雨から発売されているイントラコンカ型イヤホンのフラッグシップです。 昨今ではイヤホンの大半がカナル型の為に、イントラコンカ型、それも音質に拘った機種となるとかなり希少です。chaconneはその中でも前作liebesleidに続き非常に高い評価を得ているイヤホンです。 個人的にカナル型の装着感が機種に問わずどうしてもだめなため、ずっと欲しかったのですが今年に入ってようやく手に入れました。
【特記事項】 イヤホンであるにもかかわらず駆動の難しさがある機種です。駆動力が無ければかなりひどい音になりますし、駆動力があるだけでも高域が暴れるのでかなり煌びやかな音になります。 駆動力がありかつ制動も上手くしてくれるアンプでようやく高域が暴れずに鳴るようになりますが、そこそこの据え置きですら暴れるケースがあります。私の所有だと、Solarisやtaurus MK2だと大丈夫ですが、model370CPだと暴れてしまいます。 本レビューはその中でも最も好印象だったSolaris(DacはDA-N5)での音を記載します。 また、最後に簡単にechobox Explorer→Aurender Flowでの所感も記載します。
なお、メーカーはイヤパッドを装着して鳴らすことを前提としており、好みによって付け外すものでは無い立ち位置です。ですので、外して使う場合は自己責任となります。
個人的に装着感の観点からイヤパッドの使用は必須で、無い場合手で保持しなければいけないためにかなり大変です。
また、簡単にあるなしの音を比較してみましたが、純粋に音質的な観点から見ても外して使用するメリットは基本的に無いと思っています。この辺りは鳴らす環境でも変わるかもしれませんので断定はできませんが。
【帯域バランス】 フラット~やや高域よりのかまぼこです。 イヤホンで5万円以内の機種という事もあり、流石に低域への伸びや高域への伸びには限界がありますが、十分に健闘していると言えます。と言いますか、これ程頑張っている機種はヘッドホンを含めても5万円以内では殆ど見つけられないでしょう。 手持ちの機種だとHD650、WOOD01(HA-SW01)、jp1等と比較しても基礎性能は上回っているほどです。
【音場】 奥行き方向の表現は流石に弱い物の、上下左右に関してはかなり広いです。 特に驚いたのが、イヤホンであるにも関わらずヘッドホンとほぼ同じような音場の展開のさせ方をしている事です。 これまで試したことのある機種は「音が直接耳に飛び込んでくる」感覚がヘッドホンより強く、基本的に別物だと考えていたのでこれは素晴らしいことだと思います。 私自身が高価格帯のイヤホンには疎いのであまり知らないのですが、昨今の質の高いイヤホンだとこのような音場展開は普通になっているのでしょうか。
【分解能】 音の分離は良好で、定位も明確です。細部の描写もかなり頑張っていて、非常に質の高い音色の描写を楽しめます。 低域は流石に量感は少ないですが、下方向への伸びはかなり頑張っています。 中域は他の帯域に邪魔されることなく聞こえてきますし、ボーカルが引っ込むようなこともありませんが、一歩前に出てくれるという程ではありません。
高域方向への伸びは良好で、量も十分です。
総じてかなり高い分解能を持っていると言えるでしょう。
【音色の描写】 低域の量感は流石に控えめですが質は悪くありません。実体感には欠けるもののタイトな質感で、早く刻むような鳴らし方をします。これはこれで魅力があると言えるでしょう。 中域は特にへこむことなく聞こえてきます。ボーカルの表現は男声女声ともに上手くこなしますが、女声の方がより得意でしょうか。 高域はやや華やかな色付けがありますが、忠実寄りと言ってよい範囲でしょう。量、質ともに申し分ない表現です。 楽器でいえば特に金管楽器、ピアノ、シンバルやハイハット等の金属系打楽器の表現が非常に魅力的です。
【その他】 ケーブルは交換不可で、バランス対応を求める場合最初からバランスプラグタイプを選択しなければなりません。その場合でアンバランスで鳴らすためには別途で変換ケーブルを購入することになります。 個人的にはこの仕様には好意的で、音質や故障のし難さの観点から下手に交換対応するよりも誠実なラインナップだと思います。 左のハウジングにくぼみの加工がされており、触るだけで左右の判別が可能なのは非常に良いデザインだと思います。
【まとめ】 全体的に非常に高い基礎性能を持ち、さらに独自の魅力も持つ素晴らしいイヤホンです。 正直言ってこの性能だと、5万円前後までの機種ではイヤホン・ヘッドホンを問わず勝負を挑める機種はかなり限られるでしょう。 個人的にはポータブル用途はほとんど考えておらず、自室でヘッドホンを使いたくないとき用で買ったのですが非常に満足度は高いです。 イヤホンであるとかイントラコンカ型であるとかに拘らず、ぜひ一度聞いてみてほしいと思える非常に完成度の高い機種だと思いました。
【おまけ、explorer→Aurender Flowでの音】 音の基本特性は上記と全く異なるという程ではありませんがそれなりに変わります。 一番大きな違いは高域で、かなり煌びやかな表現になります。私はこの煌びやかさはドライバが暴れているためだと判断していますが、あまりイヤな暴れ方ではないためにこの音を好む人がいてもおかしくないと思います。 基礎性能はやはり全体的に一回り落ちますが、そもそもの比較対象がおかしいので致し方ないでしょう。 低域が更に軽くなり量感も減るために、「人によって好みが分かれる」の範疇を超えて、明確な弱点になると判断せざるを得ません。 しかし、それでもこの価格帯のイヤホンとしては依然として驚異的な基礎性能の高さで、素晴らしい機種であることに変わりはありません。 特にカナル型のイヤホンが苦手な人にはぜひとも試してみてほしいイヤホンです。