以前ウェブサイトを作成し、そこに情報をまとめていく予定だったのですが、手違いでデータを全て飛ばしてしまったためにしばらくこちらでの更新を続けます。
今回の記事は電源ケーブルについてで、以前ツイッターでも書いた自作したもののまとめです。 今回試したものは5種、フジクラCV-S3.5sqと5.5sq、昭和電線ノイレックス(CV-S)3.5sq、オヤイデTSUNAMI V2、台湾製の空気絶縁9芯電源ケーブル(名称不明)です。 電源プラグとIECプラグにはお値打ち品で手に入れる事が出来たViborg VM502SとVE502Sを使用しています。スペックは純銅導体・シルバーメッキ・アルミ合金ハウジングです。後々ここは本命のプラグに交換しますが、条件をそろえて比較する分には問題ない程度の能力はあるだろうと考えています。お役目が終了すればサブケーブル用になる予定。 電源ケーブルの比較に使用した機器はDACのDA-N5です。
【フジクラ CV-S 3.5sq】
自作界隈では非常に有名なケーブルで、音質の面でも定評があるケーブルです。今回試した中では総合的には一番下位だと判断せざるを得ませんが、それでも付属ケーブルと比較すれば雲泥の差。 高域・低域の伸びが改善され、背景が静かになり、音の質感も向上します。どこかに特徴があるというよりはバランスが良く満遍なく能力が向上する感じです。敢えて言えば、音がストレートに飛んでくる元気の良い音でしょうか。 ケーブルは太く硬く、取り回しは非常に悪いです。長さぎりぎりで製作すると後悔します。 自作時はシールドで巻き付けられている銅テープが意外と厚みがあるので、不用意な触り方をすると怪我しますので注意しましょう。
【フクジラ CV-S 5.5sq】 今回試した中では2番目に良いなと思った商品です。 ウェブ上での評価ではとにかく癖のある、低域番長、暴力的、そんな評価が多かったので当初は一応の確認程度に考えていました。ですが、実際に試してみると非常に余裕があり、総合的に能力の高いケーブルでかなり好印象でした。確かにやや低域寄りのバランスであり押し出し感の強さもありますが、少なくとも今回試した条件ではそこまで極端だとは思いません。 また、音の輪郭を強調するようなところがあまり見られないのも好印象。空間の表現も中々良く、奥行きの描写もしっかりとしてくれます。 個人的には3.5sqと比較すると、好みでは超えられない明確なクオリティの差があると感じます。 当然ケーブル自体は3.5sqより太く取り回しも更に悪くなりますが、3.5sqの時点で劣悪なのでそこからの差分はあまり大きく感じませんでした。
【昭和電線 ノイレックス 3.5sq】 今回試した中ではフジクラCV-S5.5sqとほぼ同等のクオリティを持っていると感じたケーブルです。 フジクラCV-S5.5sqと比較すれば帯域バランスはよりフラットに近づき、低域や高域への伸びも遜色ありません。特に背景の静かさや全体の見通しの良さはかなり良好です。音場についてもきちんと奥行きまで表現してくれます。 ただ個人的に若干気になったのが、音の輪郭を強めてしまうようなところがある事です。このような傾向はインターコネクトケーブルのベルデンやモガミ等の業務用ケーブルでも見られると感じています。 ぱっと聴いた感じは音の分離能力が上がったように聴こえるので高性能に感じるのですが、地力が聴感ほど高いわけでは無いので音源によってはごまかしがきかず混濁してしまう事があります。 使用しているDACのDA-N5が音の輪郭は強調しないのにしっかり分離しているという、この傾向と真逆に近い音を出すために余計に相性が良くありません。 ただやはり全体的な能力の高さは非常に良いですし、個人的にはGrace DesignのDACに合わせると相性が良さそうだと感じます。 ケーブルの作りはフジクラCV-Sよりも更に固く取り回しは非常に悪いです。 また、シールドで巻かれている鉄板がかなりの厚さで、簡単には曲がらないので切断面には細心の注意を払いましょう。うかつに触ると単に切り傷ができるだけではなく、曲がらないために深く食い込んで行くのでかなり危ないです(経験済み)。
【オヤイデ TSUNAMI V2】 オーディオグレードの電源ケーブルで、自作用としてはそこそこ高級な部類に入るでしょう。 銅線の素材として有名なPCOCCが供給終了との事で、新たに独自の加工を施した素材であるSSC102導体を採用したというケーブルです。 導体へのこだわり、絶縁体の選定、ケーブル構造などで、国内メーカーのオーディオグレード電源ケーブルとしてはスタンダードな構成だと思います。私にとってはこのケーブルが試金石であり、日本メーカーのオーディオ電源ケーブルを採用するか否かを判断するために購入しました。 結果としてはかなり肩透かしを食らったという感じ。 背景の静けさ、見通しの良さはフジクラや昭和電線のケーブルと比しても頭一つ抜けており、そこは良い点だと思います。 ですが、それ以外の情報量、特に音色の描写と余韻の描写がかなり悪く、特に余韻は唐突に音が消えてしまう印象を受けます。また空間描写の奥行き方向も苦手で、平面的な鳴りに近いです。 何と言いますか、背景の静けさを求めるために、ノイズと一緒に大切な情報も捨てているような印象です。総合的な能力からの判断として、これを採用したいとはどうしても思えませんでした。 国内のケーブルメーカーのオーディオグレード電源ケーブルは、上を見ればまだありますがそこまで大きな差がつくようには思えない造りの為、同様に採用する予定は無くなりました。
【台湾製 空気絶縁の9芯電源ケーブル(正式名称不明)】 ebayで見つけた電源ケーブルで、芯線の構造に空気絶縁構造を取り入れたケーブルです。単純な素材追求だけでなく、ケーブルの構造での音質効果をも求めたケーブルと言えるでしょう。 AlliExpress等の中国通販サイトで有名な某社の偽物と酷似しているので最初はスルーしてたんですが、製品紹介ページを見て考えを改めました。某社の表記は一切なく、淡々とケーブルの性能が表記されているだけだったからです。 それらの表記を見るに非常に高性能であることも魅力を感じた要素ですが、製造国が台湾であり内容を信用できると思ったのも購入するに至った要素です。海外のケーブル自作界隈では有名なNeotechも台湾の会社ですし、調べる限りかなりの信用と高評価を得ていますしね。 今回は試しに8フィート(約2.4m)購入してみました。但しこのケーブルはシールド構造が無いので、外皮に導電性アルミテープを巻き付けシールドとし、その上からガラス繊維編組のスリーブをかぶせています。 結果としては、これまで試したケーブルとは完全に別次元でした。 音の感触としては極めて自然で、輪郭を強調するような事も無し。帯域バランスはフラットです。
情報量は非常に多く、特に高域の表現が素晴らしいです。また、低域や中域の音色もしっかりと描きます。 空間表現についても抜群に良く、左右や奥行きだけでなく臨場感もあり、ライブ音源などを聴くとまるでその場にいるように錯覚する事すらあります。 このケーブルを知ってしまった以上、少なくともこれ以上でなければ採用する余地が無くなりました。それは単純な能力の高さだけでなく、価格性能比まで含めて考えても、これまで試したケーブルとはあまりもレベルが違いすぎるからです。 確かにこのケーブル自体は4フィート(約1.2m)で120ドルと自作ケーブルとしてはかなり高価ですが、それでも飛び抜けているわけではありませんし、何より得られるパフォーマンスからすればむしろ安いまであります。 実はこのケーブルだけではなく、海外のメーカーのケーブルで面白そうなケーブルをいくつか見つけています。 その中でも出来れば試してみたいなと思うのが、NeotechのNEP-3001ⅢやNEP-3003Ⅱです。こちらも、単純に素材の追及だけではなく独自の構造を取っているケーブルです。 もっと上を見るならばNEP-1001やNEP-3200なのでしょうが、流石に価格的に辛すぎるので、試すとしたらNEP-3001Ⅲ位までが限界です。
今回の感触はこのような感じです。 ある程度優劣はあっても、フジクラ、昭和電線、オヤイデのそれぞれのケーブルは同クラスでの争いですが、空気絶縁ケーブルの方は完全に別クラスという感じです。 今後プラグの変更や、新しいケーブルを試したらまた記事にしていきたいと思います。