DA-N5を購入して感じた事

さて、以前DA-N5を購入した際の記事で、ハイエンドの中に足を踏み入れないと得られないものがあるのでは無いか?という事を書いたのですが、ある程度考えがまとまって来たのでこの辺りで一度記事にしておきたいと思います。 なお、ハイエンドクラスと言ってもかなり幅がありますが、概ね定価が100万円以上であり、その会社のフラッグシップ(もしくはそれに準ずるクラス)のイメージです。 因みに、私がこれまで使用した事のある据置DAC(同等機能を持つ機種を含む)は購入順に以下の通り。

 

・TC Electronic BMC-2(現在未所有) ・M-Audio FW1814(現在未所有) ・Grace Design m904 ・Marants SA-13S1 ・Lynx Studio Technology HILO USB(現在未所有) ・Prism Sound Lyra2 ・Theta Digital Casablanca2(Superior DAC) ・Lavry Engineering DA-N5

 

これらを使用してきた経験、そして他のハイエンドDACの情報などを収集して得られた物を組み合わせたときに、以下の点は違いとして現れやすいのではないかと感じています。

 

1.低域の質の違い 2.高域の質の違い 3.空間表現の奥行きと分離の違い 4.情報量の捌き方

 

以下それぞれについて詳しく書いてみたいと思います。 但し、どうしても私の少ない経験に基づくものが多い為、勘違いの可能性も大いにあるのでもしそうなら遠慮なく突っ込んでください。

また、ハイエンドと呼べるようなDACできちんと聞き込めたのはDA-N5だけなので、現状ではあくまでDA-N5とミドルクラス以下のDACとの違いという事になります。ですが、これまでの使用経験からこれらはDACの個性で片づけられるような違いではなく、明らかに基礎クオリティが違うと感じた事から、恐らくハイエンドとミドルクラス以下との差なのではないか?と予想しています。

 

1.低域の質の違いについて これは私が音楽制作系で使われる物を主に使用してきた面もあると思うのですが、DA-N5を基準にして考えたときに私がこれまで使用してきた機種で他にきちんと低域を表現できているDACはありません。もう少し正確にいうと、特定の帯域より下の部分がかなりごっそりと抜け落ちていて、低域が地に足をついていない感じです。 その為に、音楽を下支えするような低域は出せていないですし、低域の制動が甘いのか揺らぎもかなりの確率で感じます。それぞれの機種を単品で聴くとそこまで感じないのですが、DA-N5と比較してしまうと非常に差が大きく、むしろ多くの音源にここまで低域の情報があったのかと驚くほどです。

また、低域のパートを司る楽器の音色の描き分けでもかなりの差があります。因みにDA-N5を単独で聴いても低域に特徴がある出音では断じてなく、本当にフラットで特定の帯域に偏りのない音質なのですが、クオリティに差がありすぎてそう感じてしまいます。 音楽の正確性が求められる機材で、しかもLyra2やHilo辺りはインターフェースとしてはそれなりに上のクラスには属するはずです。それらでも単純に出せていないというよりは諦めているという風に感じられますし、他にも情報を調べた限りではその辺りの評価が高い機材は見かけませんので、恐らく一定以上のコストをかけないと難しいのだろうと思っています。

 

2.高域の質の違いについて 以前ツイッターでも何回かつぶやいたのですが、高域の質感をしっかり表現するのは物凄く難しいと感じます。これについても、DA-N5以外の機種できちんと表現できている機種は無いと判断せざるを得ません。Casablanca2が多少健闘してはいますが…… このことについてはDAC設計者である逢瀬のyohineさんも多く言及しており、特にΔΣ系のDACでは特別な対策をしない限り難しいようです。かと言って他の方式なら大丈夫かと言われればそんなことは無いようで、どの方式にも欠点はあり対策なしでは難しいのは変わらないようです。 ではその高域をハイエンドに届かない機種はどうしているかと言えば、美音系に脚色してごまかすか、脚色が無い代わりに荒れていたり情報量が不足していることが多いと感じます。音楽制作系のインターフェースは概ね後者でしょう。 これについても、各種情報を調べる限りではハイエンドクラスまで行かないと対策されているDACは少なそうです。現在30万円クラスで非常に評価が高いamariもこの部分は普通ということなので、少なくとも50万円以下のレベルでこの辺りの対策がされている品を探すのは難しいのではないでしょうか。

 

3.空間表現の奥行きと定位及び分離の違いについて 空間表現についてはまず左右の広さと上下については、20~30万円辺りのDACになれば広さを感じさせる機種が多いと思いますし、上記機種でもLyra2やCasablanca2はかなり頑張っていると思います。ですが、奥行きについてしっかりと距離感を含めて描写できるDACは上記機種では無く、これもDA-N5が圧倒的です。 そして、定位と分離については音が分離しているかどうかという事よりも、分離のさせ方に違いがあるように思います。 20~30万円クラスのDACになれば、普通に聴いていて分離の能力に不足を感じることはかなり少なくなると思います。しかし、確かに音は分離しているのですが、その分他の音と断絶してしまい、距離感などが曖昧になることが多いように思います。 勿論1つ1つの音源にフォーカスすれば定位はしっかりと定まっているのですが、総体としてみると何故がそれぞれの距離感が見えないという不自然さが気になってしまいます。これもDA-N5を購入するまでは特に意識していなかったのですが、DA-N5に慣れたのちにLyra2やm904を聴きなおすと強く感じました。 あと左右の分離について、ある音源が演出で左右に動くものを聴くとき、厳しく見ればその動きに不連続面が出ないのはDA-N5だけです。 このように、それぞれの音源を分離しながらも繋がっているという表現は、やはりハイエンドクラスでないと厳しいのではないかと感じています。

 

4.情報量の捌き方 個人的に一番差が出ているように感じる部分です。 こちらも以前何度かツイッターでつぶやいたのですが、少なくとも私の経験ではミドルクラスのDACは情報量が増える程に音の鳴らし方に必死さ感じてしまいます。ですが、DA-N5はその必死さを全く感じさせることがありません。他にはCasablanca2も中々健闘していて、余裕があるという程ではないもののそこまで必死な感じを見せません。 情報量が増えるというものでもいくつか違うパターンがあるのですが、違いが出やすいと感じるものは私は2パターンあると感じています。 一つはクラシックのオーケストラのように大編成で楽器点数が多く、単純に重なる音が多いような音源です。また、音圧の高さも関係している(音圧が高い方がより厳しい)ように思います。 もう一つは、メタルコアデスメタルのように楽器数は多くなくとも、高い音圧と高速なパッセージなどで音を詰め込むようなタイプの音楽です。 この「必死な感じ」については結構表現に困る感触で、上記の高域・低域の質や音の分離等よりも分かりにくい部分だと思います。他のDACとの差異としても一番微妙なはずの項目なのですが、トータルでの音質を見たときに何故か一番超えられない壁のようなものを感じる部分です。 あくまで私の個人的な感覚ではありますが、上記1~3は今後のチップの進化や設計の進化等で差が埋まる可能性はあっても、この余裕のある音は難しいのでは無いかと感じます。

 

現状ではこのような感じです。 ハイエンドクラスのDACを比較試聴するという事は現実的には非常に難しいので、ハイエンドDACならどれもこれらを備えているのかという事の確認は今後の課題ですね。 ただ調べてみる限りハイエンドクラスのDACともなれば、それぞれで出音の際はあれど基礎クオリティに関しては必ず高い物を備えているようです。ですから上記で感じたようなことは、多少の差はあれど他のDACも備えている能力だと予想しています。少なくとも、DA-N5の専売特許というわけでは無い筈です。 現状でDA-N5の運用(ケーブルや足回りなど)についてはまだまだ詰める要素がたくさん残されているので、その辺りを詰めるとまた違った感想を持つのかもしれません。 この辺りはまた気付いたことがあれば記事にしていきたいと思います。