変化の区分

 自分のオーディオシステムに変更を加えた際の音の変化について、私自身がどのように捉えているか書いてみようかと思います。
 なお、今回はあくまで改善方向についてのみですが、当然変更を加えれば悪化する場合もあります。ですが、悪化する所まで書くと煩雑になるので、今回は触れません。
 なお、使いこなしがメインの考え方なので、ヘッドホンそのものの変更についても触れません。

 

1.微改善
 明らかに変化はしているのだけど、変化の差分が大きくない場合です。基本的にはアクセサリ関係の変更で起こる事が多いです。
 特に足回りの変更は基本ここで、これ以上の改善が起こる事は少ないと感じでいます。
 とは言え、これらが積み重なるとその変化は決して無視できるものでは無く、各機器の性能が上がるほどよりその変化を捉えられるようにもなるので、自分のシステムの音を詰めるには欠かせない領域です。

 

2.改善~大幅な改善
 一聴して分かるレベルの改善ですが、基本的には変更前からの延長線上の音の場合です。
 アンプやDAC、あるいはDDC等の機器の更新がここに属する事が多いですが、一部ケーブルの変更もここに属する物があります。
 どんな変更を加えたにせよ、ここに属する変化が有れば基本的には成功と捉えています。
 とは言え、大幅な音の変化がある場合はトレードオフが潜んでいることもあり、一定期間の検証が必要だとも感じます。
 特にS/Nが改善したと感じる場合は、一部の情報をそぎ落とした結果である場合があり、一番気を付けている項目です。
 一例として、背景が漆黒だと感じる場合はかなり注意が必要で、大抵の場合色んな情報を削っていると感じます。
 その為、以前まではこの表現は誉め言葉として捉えていたのですが、現在はむしろ何らかの瑕疵が潜んでいると捉えるようになっています。

 

3.質的転換
 一番書きたかった変化であり、今回の記事の主題です。
 これまでの自分のシステムの延長線上の音では無く、音楽の鳴り方そのものが変わったように感じる変化です。
 基本的には大きな改善が絡むことが多いのですが、それだけでは達成できる物では無い一方、変化が大きい訳ではなくとも起こる事もあります。
 恐らく複数の要因が絡んでいて、それが一定の閾値を超えた時に発生するのではと現時点では考えています。それゆえに、最後の一押しは必ずしも大きな変化では無くとも良いという事なのでしょう。
 また、一点特化型の機器や局所的に豪華な機器を加える等の、限られた長所が突出している場合に起こる事はまずなく、総合力が問われる変化だとも感じます。
 この変化が起こると、自分の認知の変化が一気に進むことが多く、それ以前と以後で見える世界が全く変わる事もあります。
 とは言え狙って起こす事は困難で、基本的には1と2の変化を積み重ねる事でしか達成できないと現在では考えています。

 

 今回このような記事を書いたのは、前回のTHRORのケーブル周りの変更により、質的転換が起こったからです。
 どの様な変化があったかを具体的に、正確に言葉に表すのは難しいのですが、敢えて言えば明らかに音が自由かつ自然に鳴るようになったという事。
 特に音の分離に絡む要素が大きいでしょうか。
 これまでは、大げさに言えばそれぞれパートで鳴っている音の周りに僅かに全く情報が無い部分があり、それが音の輪郭を形作り分離させていたように思います。
 それゆえに、確かにきちんと分離はしているけれど微妙な違和感があり、無意識に整理され過ぎている印象を持っていたようです。
 これがその部分までちゃんと音の情報で埋まり、音のテクスチャがより自然になり、また各パートが自然に混ざりあうようになりました。
 ですが、じゃあ音が混濁しているかと言うとそういう訳でも無く、聞き分けようと思えばちゃんと分離して聞き取れます。
 勿論限界はありますがそれは以前の音でも同じで、少なくとも分離能力は悪化しておらず以前と同等、場合によってはむしろそれ以上の能力を発揮しています。
 この鳴り方は、より現実世界の音の鳴り方に近づいたと感じています。
 私たちが通常生活していて、音が分離されているかどうかなんて意識しないですし、それは生の演奏を聴いた場合も同様でしょう。
 ですけど、ちゃんと意識を傾ければ、余程の場合を除いて聞き分けられるという感覚です。

 

 今回のケーブルの処置による変化は、トータルで見ればPremiere HPAやDA-N5を導入した時の様な大きな変化ではありません。
 一つ一つの要素に限ってみれば、むしろ微改善に留まる項目も多いでしょう。
 ですが多くの要素にわたって改善された事、これまでの積み重ねで最後の一線までの距離が近くなっていたことが、今回の変化に繋がったのだと思います。

 

 今回の質的転換により、明確に私の中で基準点が出来た為に、今後はこの音をどう発展させていくかが要点となります。
 ひとまずはUtopiaやHE1000seのケーブルについても処置を施すことは以前も書いた通りですが、それ以外でも詰められる要素は色々と残っています。
 足回りもそうですし、ヘッドホン以外のケーブル関連も、試したいことは色々とあります。
 それは進んだり時に後戻りしたりしながら、地道に積み重ねる日々に戻るのでしょう。
 けれど、そういった取り組みの先に稀に今回の様な変化がある事が、この趣味の醍醐味でもあり続けている理由でもあるのだと思います。