DH labs Revelation レビュー

今回は、自作ケーブルのリファレンスとして購入したDH LabのRevelationについてレビューしたいと思います。 RevelationはDH Labsのインターコネクトケーブルのフラッグシップです。仕様として、ケーブルは純銀導体、独自の絶縁体である発泡PTFEを使用、プラグの導体は純銅金メッキ(99.9%、IACS93)といった造り。後はケーブルとプラグの結線は圧着といった辺りが音質に影響しそうな所でしょうか。

因みに発泡PTFEは空気の割合が60%で、比誘電率は1.4(空気が1.0、PTFEが2.1)です。 可能な限り純粋な信号伝送を目指して素材を吟味しつつ、様々な工夫によりアフォーダブルな価格を目指した製品と言えると思います。 実際に、上記のようなかなり拘った仕様にもかかわらず、XLRの1mで現地実売価格が5万5千~6万円程度という価格なのは本当に凄いと思います。 単純にケーブルが純銀導体という条件だけに絞っても、10万円を切るケーブルというのは非常に少ないです。 10~20万円クラスのケーブルであってもコネクタはノイトリックというのもさして珍しい物ではありませんし、良くてリン青銅やベリリウム銅のプラグといったところでしょう。 ましてや、独自の絶縁体を採用しているケーブルなどまずお目にかかれません。 このケーブルはスタジオ等の業務用ケーブルの最上位という位置づけのようですので、今回はmogami2534+ノイトリックXLR(以下2534と表記)とも比較してみたいと思います。

 

1.基本的なケーブルの傾向 まず、このケーブル自体の音質傾向について書きたいと思います。 周波数レンジが広くて低域・高域の伸びが良いケーブルです。純銀線という事で高域に特徴があるかと思ったのですが、特に色付けや演出過剰等は感じません。

背景は非常に静かですが、黒く塗りつぶすのではなくきちんと空間を描写するタイプです。 音場は広いですが左右よりも奥行き方向の広がりが印象的で、定位も明瞭です。

背景の静かさと相まって弱音の音色が聞き取りやすい。音像にはしっかりとピントが合っていますが、業務用ケーブルにありがちな輪郭を強調するような事は有りません。 情報量、細部の描写、音の分離といった分解能も非常に高性能です。 全体的な印象をまとめると、全方位で高性能な優等生タイプで脚色や色付けが極めて少ないケーブルです。しかしながら、そういった高性能感をあまり押し付けない為、とても自然な音を鳴らせていると思います。

 

2.mogami2534との比較 そもそも価格が10倍以上あるためにあまりフェアな比較ではありませんが、業務用ケーブルの中でも定評のあるケーブルという事で比較したいと思います。使用経験がある人も多いと思いますので、想像しやすいという事もあると思いますし。 性能差が大きい順に、低域の描写、背景の静けさ、全域での音の質感と情報量、空間の描写、例外的な位置付けが高域の描写です。

 

まず低域については非常に差が大きく、低域方向への伸び、音色の描写、分離等様々な面で大きな性能差を感じます。Revelationを聴いた後に2534を聴くと、伸びの悪さからか腰高で地に足がついていないように感じます。音色の描写も曖昧で、分離も上手くできない事があると思います。

 

次に背景の静けさについても差は大きく、これも切り替えた瞬間に分かるくらいには差があります。Revelationと比べると、常に背景にざわつきがあり音にまとわりつくように感じます。その為に特に弱音部の表現で差がつきやすく、録音の良いclassicの音源等で結構差が出やすいです。

 

その次の全域での音の質感と情報量についてですが、大きく違うのは輪郭の描写だと思います。 これまで過去にも何度か書いてきましたが、2534に限らず国内で流通している有名な業務用ケーブル(Beldencanare等)は輪郭を強調する所があると感じます。 Revelationにはこの強調が殆どなく、かといってそれで分離が悪くなるようなこともありません。この傾向はDA-N5の音質傾向とも通じるところがあり、非常に相性が良いと感じます。 また、2534だと全域で音に荒れが付加され、ザラっとした質感になってしまうように思います。勿論音源そのものが荒れを持っている場合もありますが、2534だとどんな音源にも一定程度の荒れを感じます。 Revelationだと荒れを持った音源とそうで無い音源をきちんと描き分けできています(もっと高性能なケーブルから見ればそれでも荒れがあるのかもしれませんが……)。 また、音源そのものの情報量自体Revelationの方が拾い上げられているので、音の荒れと一緒に情報も切り捨ててしまうようなタイプでもありません。

 

次に差があると感じるのは空間の描写なのですが、これはあまり差は大きくないと感じました。 奥行き方向こそそれなりの差は感じますが、左右についてはRevelationの方が若干広い気がするかも?という程度で、空間の広さが分かりやすい音源でようやく判別できる位です。奥行き方向を描くこと自体が難しい事ではあるとは思うのですが、ここまでに挙げた点ほどには差を感じませんでした。

これはRevelationがどうこうというよりも、2534が健闘していると言ってよいと思います。

 

最後に例外的な位置付けとした高域の描写の差ですが、これはきちんとした理由があります。

というのは、絶対的な性能差としてはそこまで大きくないのですが、DACでここを改善する為にはハイエンドを視野に入れないといけない気がしますし、アンプやヘッドホンでも非常に難しい領域なので、そこで明確な性能差を多少でも感じ取れるだけでもかなり凄い事だと思うからです。

因みに最初の方でも書きましたが、脚色や色付け等の特有の癖によるものでは無く(美音にしてごまかしたり、派手にして隠したりするのではなく)、地力で高域の情報量を捌いていると感じます。 このケーブルを聴く限り、純銀導体=高域に特徴があるというのは必ずしも当てはまらず、ケーブルの設計次第でその性能を生かしながらニュートラルなケーブルも作れるのではないかと感じました。

 

3.最後に 最初にケーブル自体の印象、そして次にmogami2534と比較してみました。 レビューに使用した機材はPC→Lyra2のデジタルアウト→DA-N5→Solaris→HE-1000seです。比較はSolarisにDA-N5のメインアウトとモニターアウトの両方を差し(レベルは当然揃えてます)、Solarisセレクタ機能で切り替えながら行いました。 比較中にRevelationだと思って聴いていたら音が変だと思い、確認したら2534の方だったという事がありました。これをもってブラインドで100%判別できるとまでは言いませんが、条件によっては思い込みを覆せる程度には差があると言えると思います。 なお本ケーブルの購入においては、本来であれば正規代理店であるケーブル舎経由の品を購入すべきだとは思うのですが、国内での販売価格は海外の実売価格の7~8割増しで公式直販比較でも5割増しである事、そしてコネクタを購入する為に結局海外からの取り寄せになる(ケーブル舎ではコネクタは扱っていない)という事で、コネクタと一緒に海外の販売サイトであるaudiohobby.euから購入しています。価格は送料も込みで5万6千円程度でした。 なお、公式の直販はアメリカとカナダ限定なので、日本からは購入できません。

 

今後の自作ケーブルのリファレンスとする為にRevelationを購入しましたが、その判断は正解だったと思います。 このケーブルに少しでも近づけるように、色々と試行錯誤していきたいと思います。 まあ正直言って、サウンドクオリティと価格からすれば普通にRevelationを必要数購入した方が、価格の面でも手間の面でも一番コスパが良い気はしますが笑 因みに、Revelationを購入した事でその能力を確認できたケーブルがあるので、次の記事で紹介したいと思います。