トラブルの連続 バッテリー導入記

 以前にも記事で軽く触れましたが、Audio PCの電源としてバッテリーを導入しました。これを、HDPLEXのDC-ATX 500Wと合わせて使用しています。
 購入したのは12V 200Ahの製品。国内で買ってもどうせ中身は中国ですし、何なら日本で売ってるセラーの多くは中国の企業で、発送も中国からになる事が予想されます。
 なら最初からアリエクで良いよねとそちらで購入しました。購入したのはこれ(リンク先Ali Expressの製品ページなので注意)です。
 選んだ理由としては、200Ahの容量で最安クラスな事、充電端子が専用で設けられている事(エマーソンコネクタ)、簡易的ながらLCDディスプレイがありバッテリー残量を確認できる事、オンオフスイッチがある事等です。
 ですが、購入してから届くまで、そして届いてから運用に至るまでとにかくトラブルの連続でした。その辺りを書いて行きたいと思います。

1.長い納期とおかしな追跡記録
 注文してから販売者から連絡があり、通常の納期が1週間程度の所、現在日本向けの倉庫に該当するモデルに在庫が無いため他の倉庫から発送になる。日数が35日ほどかかるが構わないか?と連絡が入ります。
 そこまで急ぎの品ではなかったこと、ここまで好条件の品は他に無かったこと等もあり了承しました。これが最初の始まりです。
 発送の連絡は割と早めにあったのですが、そこから1か月以上追跡記録が更新されません。更には、9月の中旬になって8月の中旬の追跡記録が更新されるという謎現象も起こります。
 果たして本当に届くのかやや気を揉んだのですが、最終的には相手方の発送からほぼ50日ほどかかったものの無事届きました。
 とは言え、日本の流通ほど正確にとは言いませんが、流石にもう少し納期の見積もりもシステムもきちんとしてほしいと思う所です。

2.端子の不適合とその他もろもろ
 購入したバッテリーの充電端子がエマーソンコネクタを採用しているので、そのための充電器もエマーソンコネクタを採用している物を購入しました。
 充電器は製品仕様の推奨充電電流を元に選定したのですが、これがバッテリーのエマーソンコネクタと規格が合いませんでした。
 充電器側は50A対応品、バッテリー側は125A対応品で大きさが違うのです。製品仕様にはどちらもそこまで記載されていなかったので、買ってみないと分かりませんでした。
 エマーソンコネクタの規格について知識があって、バッテリーと充電器の最大充電電流を考えれば予想は出来たと思いますが、私は買う時はそうでは無かったので……
 そんな訳でそれに対応するために改めてエマーソンコネクタを買い増し、ついでに圧着工具も購入。端子のごつさから自分の握力や腕力では行ける気がしなかったので、油圧タイプのものにしました。最近では結構安く出回ってますので。
 実際に作業してみてですが、油圧タイプの物を選んだのは正解でした。何なら、これですら少し難儀したレベルでしたし。
 また、バッテリー側のコネクタの交換は作り上かなり難しそうだったのと、上限が低い方に合わせるのは問題があるだろうという事で、充電器側のコネクタを125A対応品に交換しています。
 因みに、HD PLEX DC-ATXへの電源入力はDCジャックの7.4mm*5.0mmというやや特殊なコネクタなのは以前に書いたと思うのですが、対応するプラグを見つけることは出来ました。
 ですが、プラグのはんだ付けするピンが非常に貧弱で、規格上限対応の電線(5.5Sq)をはんだ付けしただけで、マイナス側のピンがケーブルの重さに耐えきれず折れました。
 以前Xで当該DCジャックが規格通りの電流を流せるとは思えない(500Wなので12Vなら40A以上)と指摘を受けたのですが、その際に一応公式が採用しているのだから最初はそれで試してみますと返答しました。
 実際には、電流を流せるかどうか以前に機械的強度が足りませんでした。買った品が粗悪品だった可能性も無くは無いですが、実際に作業してみてサイズ的にかなり厳しいと感じましたので、採用した規格そのものに無理があると思われます。エマーソンコネクタの50A対応品のいかつさなどを見ても、正直あれで対応できているようには思えません。
 そんな訳で、DC-ATXへの入力端子にもエマーソンコネクタを採用しました。対応電流も最小規格が50Aで、丁度良い感じだったので。
 ケーブルは付属のオリジナルを途中でカットして作り直しています。DC-ATX本体に接続する8ピンの端子は恐らくPC用のCPU電源ケーブルの端子と同じだと思われますので、そちらかも流用出来るとは思いますが、今回は手元に余りがなかったのでオリジナルを改造しました。
 オリジナルの仕様に存在意義が殆ど見出せないのと、リセールを考慮する必要性を感じなかったので別に良かろうと。

3.最大のトラブル、バッテリーがきちんと動かない
 上記に挙げたものはまあ言っても細かい所であり、トラブルとしては大したものではありませんでした。
 しかし届いてから最大のトラブルに直面します。バッテリーの動作不良です。
 まず充電動作の確認のために、作り直した充電器を接続してみますが、どれだけ電流を上げても1.5Aから2A程度しか流れません。
 この時点で少し嫌な感じがしたのですが、取り敢えず残容量を確認してみると60%程と表示されたので、チェックはできるかと実際にPCに接続してみます。
 この際もやや不安定な印象は受けたのですが、ひとまず動作自体は可能だったのほっと一息……と思ったのもつかの間、動作10分程度でいきなりPCの電源が落ちます。
 以降は全く動作しなくなり(厳密にいうとすぐに電源が落ちる)、疑問に思いテスターで測ってみると、負荷を繋いでいない状態では13V以上出力されるのに、負荷を繋ぐとすぐに12V以下にドロップしてしまうことが判明します。
 加えて充電速度が全く上がらないのもそのままであり、何ならある程度充電しているうちについには1Aを切るようになりました。

 これは流石におかしいという事でセラー(メーカー公式)に直接連絡したのですが、帰ってきた返信がこれまた微妙でして。
 最大50A対応の充電器を使っているけれど充電時に少ししか電流が流れないことと、本体表示で90%位容量残があってもすぐに電圧が12V以下にドロップすることを伝えたのですが、その返答は本体表示は正確ではないので信用するな、充電は15~20Aで行ってくれという物でした。
 そもそも電流が流れないって言っているのに15~20Aで充電してくれというのも意味不明ですし、その値も実際の販売ページの製品仕様に書かれている充電推奨電流が40Aなので半分程の値です。推奨とは一体……
 LCDパネルの表示に至っては正しくないから信用するなとか、じゃあそれをつけた意味は何なのという。因みにこのパネル、電池の現在の容量と出力電圧しか表示できないので、それが信用できないとなるとマジで意味が無いです。
 しかも電圧や容量を測っている端子が充電端子とも直接つながっているのか、充電器を繋ぐと充電器の電圧(14.6V)が表示され容量はいかなる場合でも100%表示になる、つまり充電中はどれ位充電されたかが全く分からないという欠陥仕様です。
 
 この時点でメーカーはとても信用できるものでは無いなと思ったのですが、一応言われた通りに充電はしてみようと対応を継続してみます。
 ですが、72時間以上遅い速度で充電し続けても症状は殆ど変わらず、電圧がすぐにドロップするのもそのままで、この時点で返品がちらつき始めます。
 とは言え、届くまでかなり長い時間がかかったうえ、対応にもそれなりに時間をかけているので、また一からやり直しは流石に勘弁願いたいところ。
 余談ですが加えて判明した仕様として、まず電源スイッチをオンにしていていないと充電できません。
 また、充電端子と出力端子は別になっていますが内部的には直結されているようで、充電器と負荷の両方につないでいる状態だと、負荷と充電器が直結されているのと同じ状態になってしまいます(実験済み)。ですので、充電しながらの使用も出来ないと思われます。

 閑話休題

 最終的にこれはやや賭けだったのですが、直流安定化電源からバッテリーに強制的に電流を流し込んでみます。
 これは電気製品の修理をメインとしている某YouTubeチャンネルで、バッテリーのセーフモードを解除するために取っていた手法です。
 今回の症状はセーフモードに入った状態に近いと感じた為に、応用できるのではと思ったのです。あるいはバッテリー自体が完全に劣化しているかですが、流石に新品のバッテリーでその可能性は低いでしょう(一応評価はそこそこ良いセラーだった)し。
 これが当たりで、多少電流を変えながら強制的に流し込んでみたところ、ようやく正常に動くようになりました。充電も、きちんと充電機の設定に合わせて電流が流れます。
 一応安全を取って20A程度で充電を行い、満充電になったところ再度PCを動かしてみましたが、こちらも問題なく動作しました。
 連続動作も5時間程度は全く問題なかったので、きちんと電池の容量を把握して無茶をしない限り落ちることは無いでしょうし、私の実際の使用スタイルで足りなくなることもまず無いはずです。
 因みにこれは5時間程度で問題ないと判断して検証を終えただけで、動作できなくなるまで使ったという意味ではありません。現在のAudio PCは概ね100W前後程度で動いているので、バッテリーの容量を考えればほぼ丸1日は動作可能な計算になり、流石にこれを限界まで検証する気にはなれなかったのです。
 実際に使える容量はロスとか色々とあるのでもっと少ないでしょうが、その限界を確かめる意義が個人的には薄い(5時間の連続動作でも十分すぎる)ので、多分この辺を検証することは無いです。

 以上が今回のバッテリーを導入するにあたって直面したトラブルです。届くまでは言っても待つだけでしたし、コネクタ関連も別に交換すれば問題ない類なので、面倒だとは思っても心配するような事はそこまでありませんでした。無事届くかどうかだけは若干心配でしたが。
 ですが届いてからの対応については結果がどうなるか予断を許さず、正直言ってかなり疲れました。途中は結構返品を覚悟しましたし、仮にそうするとしても日本程すんなり対応してもらえるかどうかも不明でしたしね。
 まあ最終的には上手くいったのと、導入して得られた結果がそれまでの苦労を全て吹き飛ばすレベルで良い方向への変化だったので、一応苦笑交じりとは言え笑い話にできる程度には収まりましたが。
 実際に運用開始してどう変化したかについては、また改めて記事を書きたいと思います。