更にCybeneticsのデータを掘ってみる ~1500Wクラスの電源比較~

 先日リップルノイズの観点から良さそうな電源を紹介しましたが、今回は前回紹介していなかった電源で、1500~1600Wクラスの各社のフラッグシップとも言える電源についてざっと紹介。気になる人もそれなりにいると思いますので。
 1300Wまで対象を広げるとモデル数が爆発的に増えるので、そこはご勘弁を。紹介する順番は、Cybanetics社のサイトのPSU Performance Databaseにおいて、Total Score順となっています。

 

Seasonic Prime TX-1600
12V Ripple (Full Load)    16.54mV
5V Ripple (Full Load)    6.19mV
3.3V Ripple (Full Load)    11.38mV
5VSB Ripple (Full Load)    14.16m

 Seasonicの電源は高品質とされることが多いですが、実際にCybanetics社のTotal Scoreはどの電源も非常に優秀です。
 全体的にリップルノイズも少ない事が多く、製品の平均的なレベルはCorsairに次ぐレベルだと思います。
 この電源はその中のフラッグシップですが、やや前のモデルです。しかし、Total ScoreでCorsair AX1600iに次ぐ2位となっており、リップルノイズも非常に少ないです。
 100%Loadや110%Load時に急にノイズが増えますが、12V90%Loadで12mV程度だったり、3.3Vや5VSBはCrossload時は大幅にリップルノイズが少なく5~9mV程度なので、実使用時の環境ではかなり優秀だと推測されます。
 Noctua版やATX3.0と違いこちらは以前の規格ですので、そこを気にする方は注意が必要です。

ASRock Taichi TC-1650T (ATX v3.1)
12V Ripple (Full Load)    35.97mV
5V Ripple (Full Load)    18.70mV
3.3V Ripple (Full Load)    17.62mV
5VSB Ripple (Full Load)    19.99mV
 全体的にノイズ量が多く、オーディオ用途では少々厳しいという印象です。Crossload時も基本的にノイズ傾向は変わりません。
 価格的に見ても、これならSeasonicで良いとなりますし、もっと言えばAX1600iで良いとなりそうです。

Seasonic Prime Noctua Edition TX-1600
12V Ripple (Full Load)    17.11mV
5V Ripple (Full Load)    8.19mV
3.3V Ripple (Full Load)    10.90mV
5VSB Ripple (Full Load)    32.74mV
 以外にも無印の方が電源のトータル性能のランキングは高いですし、リップル周りも無印の方が低めになっています。
 但しFull Loadに比べてCrossloadの方は大幅にリップルが少ない(特に5VSBは10mVを切る)ので、実使用環境ではFull Loadの数値よりも遥かに低い値になっていると推測されます。
 因みにCrossload時では Prime TX-1600無印とほぼ差が無いレベルですが、そちらも若干ながら無印の方が成績は良いです。とは言え、測定誤差の範囲と言える程度だとも思いますので、互角と言って良いでしょう。
 Crossload時のリップル性能については、実は無印とともにCorsair AX1600iと比較しても遜色ないレベルだったりします。それ位優秀です。
 無印にない価値としてこちらはATX3.1対応であり、全体的な傾向として新規格に準拠する程リップルノイズは悪化する傾向が見られますので、最新の電源環境に対応した中で最高性能と言う意味で、非常に価値のあるモデルだとも言えます。
  ATX3.1対応と言う括りで言うと、先日紹介した電源を含めて全体で最高レベルだと言えるでしょう。
 また、CybaneticsのNoise Ratingだと無印がA-、Noctua版がA++とかなり差があり、そこはやはりNoctuaのファンを採用した事が大きいのでしょう。ですので、動作音が気になる方にとってもNoctua版がお勧めだと言えます。
 

NZXT C1500 Platinum
12V Ripple (Full Load)    21.91mV
5V Ripple (Full Load)    11.44mV
3.3V Ripple (Full Load)    15.24mV
5VSB Ripple (Full Load)    11.83mV
 こちらはノイズ量は多めです。Crossload時でも傾向は変わりません。価格的に見るとEC最安値で6.5万円程度なので、コスパを求めるならばこの電源でもありな気はします。
 しかしながらその枠は後述のCorsair HX1500iやThermaltake Toughpower TF1 1550Wがあるので、敢えてこちらを選ぶ意味は薄いかもしれません。

Seasonic Prime TX-1600 (ATX v3.0) 
12V Ripple (Full Load)    25.58mV
5V Ripple (Full Load)    11.58mV
3.3V Ripple (Full Load)    15.89mV
5VSB Ripple (Full Load)    30.42mV
 こちらもノイズは多めで、Cross Loadでも傾向は基本的に傾向は変わりませんが、5VSBのリップルがFull Loadと比べて結構少なく(10mV前後に)なります。
 ですが、やはり明確に差があるために、これを選ぶなら出来れば無印を選びたい所。
 新規格対応を求める場合は、ATX3.1まで対応しかつ実使用環境でリップル周りが優秀と思われるNoctua版の検討を推奨します。

Seasonic Prime PX-1600 (ATX v3.0) 
12V Ripple (Full Load)    21.45mV
5V Ripple (Full Load)    15.83mV
3.3V Ripple (Full Load)    13.66mV
5VSB Ripple (Full Load)    24.75mV
 こちらは効率が違っていて、TXはTitanium、PXはPlatinum。CybeneticsのサイトではTitaniumとなっていますが、Seasonic公式がPlatinum認証と明確に記載しています。
 このような違いは他の電源でもあり、Cybaneticsの認定よりワンランク落とす製品は多いです。恐らく設計上余裕を持たせてあるので、試験では当初の予定よりも上の結果が出たものの、それで発売するにはちょっと厳しいというう事だと思われます
 リップルノイズの面で見ると、同世代で比較すると実はTXより少ないです。
 しかし、TX-1600無印、あるいはNoctua版のCrossload時の性能と比較すると明確にワンランク落ちる印象で、リップル関連の性能で選ぶ意味は薄いです。
 加えて、国内でろくに取り扱いが無いのか、検索してもTX-1600しか出てこないので、敢えて探して買うのは苦労に見合わない気がします。

 

Asus ROG-THOR-1600T-GAMING 
12V Ripple (Full Load)    19.20mV
5V Ripple (Full Load)    14.92mV
3.3V Ripple (Full Load)    23.89mV
5VSB Ripple (Full Load)    13.63mV
 こちらも悪くはないのですが、敢えて選ぶほどでは無い気もします。
 Crossload時の性能はFull Loadと比べて改善はしますが、それでもTX-1600無印やNoctua版には及びません。
 既にディスコンのようなので、中古で安価な物を見つけたらワンチャン位でしょうか。


Thermaltake Toughpower TF1 1550W
12V Ripple (Full Load)    21.27mV
5V Ripple (Full Load)    8.15mV
3.3V Ripple (Full Load)    14.84mV
5VSB Ripple (Full Load)    6.14mV
 こちらはThermaltakeのフラッグシップ電源。
 12V Full Loadのリップルノイズは多いですが、90%Loadまでは概ね15mV前後で、100%や110%Loadのみ20mVを超える感じなので、実使用時は大体15~16mV辺りで落ち着くと思われます。
 Crossload時でも概ね同傾向で、そう考えるとSeasonicのフラッグシップと比べてもそこまで差をつけられていません。
 一方で現在ECでの最安値が5万円を切っており、かなりコスパは良いと思われます。
 但しやや前の電源であり、ATX3.0や3.1に準拠してはいないようなので、そこを気にする人は注意が必要です。とは言え、オーディオで必要かと言われると割と微妙ですが。
 少なくとも消費電力が非常に高い最新のGPU、現状だとRTX5090を使用するとかでない限り、あまり気にしなくて良いと思われます。

Corsair HX1500i (ATX v3.1)
12V Ripple (Full Load)    17.09mV
5V Ripple (Full Load)    6.12mV
3.3V Ripple (Full Load)    11.31mV
5VSB Ripple (Full Load)    11.44mV
 こちらは全体的にリップルが少ないです。Corsair内の最上位クラスと比較すると多いですが、他社と比較すれば最上位と比べても遜色ありません。
 80%Loadまでは更に低リップル性能で、その場合はCorsairの最上位と比較しても互角です。価格的に5~6万円程度と、最上位クラスでは安めでコスパも良いです。
 但し、80%Loadを超えると12Vと3.3Vのリップルが大幅に悪化するので、出来れば余裕を持った構成にしたいところです。
 因みに、こちらは前身のHX1500i 2022よりも改善しているので、敢えて以前のバージョンを探す理由は薄いです。RMシリーズは明らかに現行よりも以前のバージョンの方が良いのですが。
 ATX3.1対応という事で競合はSeasonic Prime Noctua Edition TX-1600になると思いますが、Full Load時はHX1500iがリップルが少なく、Crossload時はTX-1600 Noctuaの方が少ないです。
 恐らく実使用時の事を考えるとTX-1600 Noctuaの方が良いと思われますし、CybaneticsのTotal Scoreや効率、動作音のノイズレベルはいずれもTX-1600 Noctuaがワンランク以上優れています。
 トータルでの性能を重視するならTX-1600 Noctua、コスパ重視ならばHX1500i ATX3.1という感じになるでしょうか。

XPG Fusion 1600W Titanium 
12V Ripple (Full Load)    22.52mV
5V Ripple (Full Load)    17.22mV
3.3V Ripple (Full Load)    20.33mV
5VSB Ripple (Full Load)    25.36mV
 こちらも全体的にリップルノイズ量が多いです。Crossload時は多少マシになりますが、Seasonicの上位と比べて明確にノイズは多いです。
 価格的にも10万円目前とかなり上の方なので、明確な選ぶ理由がない限り、オーディオ的には選択肢はならなそうです。


ASRock Phantom Gaming PG-1600G (ATX v3.1)
12V Ripple (Full Load)    28.39mV
5V Ripple (Full Load)    20.33mV
3.3V Ripple (Full Load)    17.48mV
5VSB Ripple (Full Load)    23.58mV
 全体的にノイズが多く、これはCrossload時でも変わりません。これも特に理由が無ければ避けたい電源です。
 国内ではまだ取り扱いが無いようですが、海外では概ね300ドル程度なので、価格帯的にはミドルクラスになるでしょうか。効率もGOLDですし。
 なのでコスパを考えるとありかもしれませんがが、この電源容量を選ぶ人が価格で選ぶか?という気もするので、やっぱり微妙な気もします。
 国内に入って来た時の価格を考えても、海外で300ドル程度なら5~6万円程度にはなりそうなので、それなら上記のCorsair HX1500iやThermaltake Toughpower TF1 1550Wで良いとなりそうです。

Asus ROG THOR 1600W Titanium III (2024)
12V Ripple (Full Load)    38.98mV
5V Ripple (Full Load)    19.54mV
3.3V Ripple (Full Load)    25.50mV
5VSB Ripple (Full Load)    14.35mV
 国内ではまだ販売されおらず、調べた感じまだ海外でも発売して無さそうです。発表は2024年10月にあったようで、今後発売予定の最新の電源と言えます。
 リップルノイズ関連の性能は今回取り上げる電源の中でも最も多い方であり、Crossload負荷だともう少し低くなりますが、それでもやはり高めな値です。
 現状ではオーディオ用途では特に選択する意味は無いと思われます。

Thermaltake Toughpower GF3 1650W 
12V Ripple (Full Load)    15.86mV
5V Ripple (Full Load)    16.24mV
3.3V Ripple (Full Load)    28.42mV
5VSB Ripple (Full Load)    19.20mV
 Fullload時のリップルノイズは少々多いですが、80%負荷程度やCrossload負荷ではもう少しリップルノイズが少ないので、実使用時はそこそこ性能が良いと思われます。
 ですが、1650Wと容量こそ最大クラスな物の効率の認証はGOLDですし、CybaneticsのTotal Scoreも84.3807とそこまで良い方ではありません。
 価格的にはECの最安値でギリ5万円を切る程度で、Toughpower TF1 1550Wとほぼ同じ(むしろちょっとだけ高い)です。
 電源容量の100Wの差が決定的になる状況は極めて限定的だと思われ、少なくともオーディオ用PCではまず起こらないので、これを検討するなら基本的にToughpower TF1 1550Wを選択する方が良さそうです。

 

 今回調べたのはこんな所です。参考になれば幸いです。