一般的なATX電源のデータ比較 Cybanetics社データ参考

 Cybenetics社が公開しているATXの電源のデータで、リップルノイズも見れるという事で色々と調べてみました。
 同社の認定は静音性に関する物なので、そちらが主でありリップルノイズに関してはすぐ見れるページの比較表の中では確認できないのですが、個別の詳細データで確認する事が出来ます。
 リップルノイズで全社比較してソート出来たら神だったのですが、それは用途外の要望の類なので贅沢は言えません。
 結果は割と意外な物や、狙い目の物もありそうだったので共有します。
 なお、流石に全データをさらうのは大変過ぎるので、500W~1600Wまでの範囲で、電源スコアが高い順にソートし、トータルスコアが86点辺りまでを調べています。

1.Corsair AX1600i 
 トータルスコアで堂々の第一位、オーディオPCでもまず第一候補に挙げられる事の多い電源でしょう。
 電源供給能力が極めて高く、12VMAXでは驚異の133.3Aを誇ります。
 リップルノイズも非常に優秀で、12Vで10.84mV、5Vで6.25mV、3.3Vで15.64mV、5VSBで6.68mVです(全てFull Load、以下特筆ない場合は同じ)。
 また12Vのリップルノイズは低負荷時では8mVを切っており、それ以上になるのは90%以上の負荷時なので、オーディオに使用する際には基本的に10mV以下となっていると思います。
 これ以降に紹介する電源と比較すると3.3Vのリップルノイズがややネックですが、それでも一般的な電源と比較をすれば十分低い値と言えるでしょう。
 オーディオPCに使うには流石に電源容量が過剰な気もしますが、Roon運用のハイエンドグラボ2枚構成になるとこの位必要になりそうなので、そういう意味でも貴重な存在かもしれません。

2.Corsair AX1500i
 調べた感じAX1600iの前身のモデルでしょうか。
 リップルノイズはAX1600iと同等以上で、12Vで12.66mV、5Vで7.08mV、3.3Vで5.79mV、5VSBで7.09mVと、特に3.3Vは明確に優れています。
 その代わりに12VがAX1600i比で約2mV程高いです。これは低負荷時から高負荷時まで一貫して差があります。
 とは言え、80%以下の負荷では10mVを切っているので、リップルノイズは非常に少ない方だと言えるでしょう。
 過去製品なので入手性が悪いですが、敢えてこちらを探すというのも充分ありな性能な気がします。
 AX1600iと比較すると電源供給能力は12VMAXにのみ差がありますが、それでも125Aはあるので十分すぎるレベルでしょう。
 何よりも12V重視ならばAX1600i、3.3Vも重視するあるいはバランス重視ならばAX1500iという所でしょうか。

3.Gamer Storm (Deep Cool) PX1200G
 Cybenetics社のサイトではGamer Stormとなっていますが、型番名や写真を確認する限り国内のDeep Cool PX1200Gと同一製品だと思われます。
 こちらもリップルノイズは極めて優秀、12Vが14.78mV、5Vが4.88mV、3.3Vが9.34mV、5VSBが5.96mVです。
 AX1600iやAX1500iと比較しても遜色無い性能で、やや高い数値の12Vリップルも80%Loadまでは10mVを切っています。
 既に販売終了品の様ですが、まだ市場在庫はあり、AX1600iと比較しても半額あるいはそれ以下で買えるようなので、コストパフォーマンスが非常に高いと思います。
 また、今回紹介する製品の中ではATX3.0に対応している数少ない一つなので、そういう意味での強みもあります。
 容量は1200Wあるので、ハイエンドグラボでも1枚運用までは問題ないと思いますが、2枚運用はちょっと辛いかもしれません。

4.Thermaltake Toughpower GF3 1200W
 PX1200Gと非常に似ている性能です。
 リップルは12Vが15.24mV、5Vが6.05mV、3.3Vが9.97mV、5VSBが5.55mVとなっています。
 こちらは90%Loadまで12Vは10mV未満ですが、100%になると一気に15mV付近まで上がるようです。
 一般的なオーディオPCに使う分には、大抵の場面で10mV以下になっているでしょう。
 電源容量、販売価格もPX1200Gとほぼ一緒ですが、こちらは現行品の様で入手は容易です。また、こちらもATX3.0に対応しているので、そういう意味での強みがあります。
 これもコストパフォーマンスが高い電源と言えそうです。

5.Corsair RM1000x(2021バージョン)
 こちらも極めて低いリップルノイズを誇る製品。
 12Vが9.02mV、5Vが5.72mV、3.3Vが14.28mV、5VSBが5.01mVとなっています。
 3.3Vのリップルノイズは低負荷時から一貫して12mV以上ありそこだけがネックですが、それ以外ではAX1600iやAX1500iすら凌駕します。
 この位の容量がハイエンドクラスのグラボ1枚構成の最低ラインだと思われるので、場合によっては若干足りなくなる(あまり余裕はない)かもしれません。
 とは言え、一般的には殆どの構成を賄うのに充分な容量とも言え、価格も含めて非常にバランスの良い製品と言えそうです。
 なお、RM1000e及びそのATX3.0と3.1、RM1000x ShiftとATX3.1等、同モデルの後継品は軒並み悪化していて、候補に入らないレベルになっているので注意が必要です。

6.Corsair RM850x(2021バージョン)
 こちらはRM1000x 2021と比較しても更に低いリップルノイズで、12Vで8.61mV、5Vで5.29mV、3.3Vで11.23mV、5Vで7.38mVです。
 低負荷時は更に値が低く、70%loadでは上記順に5.40mV/3.10mV/4.80mV/6.50mVと驚異的な数値です。
 電源容量的には高性能なグラボを載せるには心もとなく、基本的にはミドルクラスのグラボまででしょう。
 CPU内臓のグラボを使うには十分すぎる容量ですが、それならば後述のRM750xがあるのでそちらを検討した方が良いと思われます。
 なお、これもRM850x ShiftやATX3.1、RM850eやそのATX3.0及び3.1等の後継品は、リップルノイズは大幅に増加しています。
 その前のモデルのRM850やRM850i、RM850 White等は比較的マシですが、この記事で挙げている製品と比べると明確に劣りますし、入手性から見ても特に検討しなくて良いかなと思います。

7.Corsair RM750x(2021バージョン)
 今回調べた中で最も低いリップルノイズを誇る製品で、これだけ頭一つ抜けていると思います。
 12Vが8.92mV、5Vが5.06mV、3.3Vが7.08mV、5VSBが6.64mVと全ての電圧で10mV未満です。負荷があまりかかってない状態では更に低い値を示します。
 RM850x 2021も80%loadまでは甲乙つけがたい感じなのですが、90%load以上だと明確に悪化します。
 RM750x 2021は全域で一貫して低い値で、電源容量さえ足りるならば文句の付けようが無いレベルです。
 こちらも容量的にはミドルクラスのグラボまでという感じなので、オーディオPCとしてはCPU内臓のグラボで行く際の最有力と言う所でしょうか。
 とは言え低負荷時のリップルについてはRM750x 2021もRM850x 2021も極めて低く差もほぼ無いので、容量ギリギリで使うのでなければどちらでも構わないと思います。
 850Wなら足りるけれど750Wでは足りないというケースもあるとは思いますが、それならばもっと上の容量を考慮すべき(余裕を持つべき)なのと、容量ギリギリで使うとRM850xはリップルノイズの増加幅が大きいので考え物です。
 こちらもRM750x ShiftやATX3.1、RM750eやATX3.0及び3.1等の後継品は大幅にリップルノイズが増加しています。
 また、前身のRM750iやRM750も同様にリップルノイズは多いので、このモデルのみの性能の様です。

 今回調べてみて感じた事は、やはりCorsairが全体的に見て優れた製品が多いという事です。
 Seasonicも悪くは無かったのですが、今回上げた製品と比較するとちょっとリップルノイズが多い製品が多かったです。製品にもよりますが、特性が良い製品で概ね10mV~20mV位に収まる感じでした。
 とは言え、本来の用途の性能や信頼性も含めて考えると悪くない選択肢だと思います。
 Thermaltakeも結構頑張っていますが、やはり平均すればCorsair程ではありません。ですが、今回のように突出して良い製品もあるので、チェックすべきメーカーと言えるのでは。
 Gamer Storm(Deep Cool)に関してはこの製品のみ突出していて、他の製品は概ね並程度と言う印象でした。
 また、気になる傾向として新しい規格準拠の製品、特にATX3.0やATX3.1対応の電源は軒並みリップルノイズが悪化しているように感じました。
 これはCorsairの電源で顕著ですし、他のメーカーでも割と似たような傾向を示していたように思います。今回挙げたPX1200GやToughpower GF3 1200Wはその中の例外と言う感じだったので、そういう意味でも価値の高いモデルかもしれません。
 調べる限りどうも2020年前後までの電源に特性値が優れた製品が多いようなので、現在では流通在庫を確保できるか割とギリギリの時期かも知れません。
 それが尽きれば後は中古を待つしかなくなるので、品質的にも機会的にも結構厳しいくなりそうです。
 個人的には既にHDPLEXのGaN ATXや500WのDCDCを購入しているので、ここに大容量電源の追加は必要ありません。これは今後新たに1台組むことを考慮してもです。
 という訳で、上記の中で最も特性値に優れ、容量的にも必要十分で、価格的にも優しいRM750X 2021の未使用品中古を一つ発注しました。
 今後届いたら、HDPLEX GaN ATXと比較してみたいと思います。